インターフェロン療法・ベタフェロン® Q&A
多発性硬化症(MS)は原因がはっきりせず、特効薬がありません。しかしMSの治療研究は世界中でおこなわれており、1980年代前半には、ステロイド薬を使って、急性期の炎症をくい止められるようになりました。1980年代後半には、MRI検査が普及しはじめ、早期に診断できるようになりました。
そして米国にて1993年、MSの再発を抑制する効果が証明された最初の薬として、インターフェロン・ベータが発売されました。身体機能をできる限り維持するために、多くの患者さんが使っています。日本でも2000年にインターフェロン・ベータ1b「ベタフェロン®」が、2006年にはインターフェロン・ベータ1a「アボネックス®」が発売されました。
MSは、症状の出方や経過に個人差があるものの、全ての患者さんが、予測できない再発・進行の危険を抱えています。最終的に治療を選択するのは、患者さんご自身ですが、インターフェロン療法を検討する時に、本文が参考になればと思っています。
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更新:2008年7月(新規公開:2001年5月)
文:中田郷子 / MSキャビン(非医療従事者)
監修:藤原一男 先生 / 東北大学医学部多発性硬化症治療学寄附講座(神経内科医)
資料提供:バイエル薬品株式会社 |
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日常生活
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ベタフェロン® とは何ですか?
ベタフェロン® は「インターフェロン製剤」です。インターフェロンは人間の体内で作られるタンパク質で、このインターフェロンを天然のまま、あるいは遺伝子を組み換えて薬にしたものが、インターフェロン製剤です。ベタフェロン® は遺伝子組み換え技術を使用した「インターフェロン・ベータ1b」製剤です。米国で1993年に、日本では2000年に承認・販売されています。
ベタフェロン® は注射薬で、2日に1回、皮下に自己注射します。
患者さんが注射できない場合は、ご家族にしてもらうこともできます。

MSにどのような効果があるのですか?
ベタフェロン® はMS患者さんに対してのみ使われる薬です。国内外の臨床試験では、再発回数を減らす効果や、再発した時の症状を軽くする効果が示されており、これはMSの病状進行に大きく関係します。再発回数が減れば、治療のための入院回数が減り、再発の重症化を防ぐことで、入院期間が短縮されてきます。
また、ベタフェロン® にはMRI検査で確認される活動病巣を減らす作用もあります。

継続すればMSが完治しますか?
ベタフェロン® によってMSが完治することはありません。しかし、ベタフェロン® には再発を遅らせ、また再発に伴う症状の進行を抑制する効果があります。MSの経過には個人差があるものの、症状の進行を抑えられれば、現在の身体機能を長期にわたって維持できます。これはどの患者さんにとっても大切です。
また、現代の生命科学は目覚ましく進歩しており、MSの症状改善にさらに貢献する医薬品の開発も進められています。

どのくらいの期間使いますか?
この質問に関する明確な回答はありません。というのも、ベタフェロン® は現在の症状を改善する薬ではないないため、効果を実感することができないからです。ベタフェロン® の再発予防効果とは「今後の再発回数を減少させること」であり、長期間使うことで、症状の進行を予防し、身体障害度を低くすることにつながるのです。
MSの経過は個人差が大きく、簡単に予測することはできませんが、ベタフェロン® の再発予防効果が科学的に証明されていることは事実です。国内外の臨床試験では、2年間以上使うことにより効果が判断されているため、数年間は継続する必要があるとされています。

かえって悪化することはありませんか?
ベタフェロン® の使いはじめに、現在の症状が若干悪化することがあります。これはベタフェロン® の副作用である「感冒様症候群」に伴って起こることが多く、注射後3〜24時間で現れて、数時間から数日間持続することがあります。特に出るのはつっぱりの症状ですが、良性で一過性のものです。
ほとんどは対症療法でコントロールでき、3ヶ月もするとだんだん落ち着いてきます。ベタフェロン® が中止になるケースは、まれです。
また、2004年に厚生労働省の研究班が実施した疫学調査によると「インターフェロン療法開始後に悪化した」と主治医が判断しているケースが報告されています。インターフェロンが良くなさそうなタイプについては、現在、研究班で調査中です。インターフェロンの効果に疑問を持つ場合は、研究班の調査結果を待つと共に、主治医またはMS専門医にご相談ください。

急にやめたら身体に悪影響を及ぼしますか?
ベタフェロン® に依存性はなく、使用をやめたことによる体への悪影響はありません。たとえばステロイド内服薬を長期に服用する場合は、急にやめると離脱症状が起こり得ますが、ベタフェロン® にはそのようなことはありません。
しかし自己判断で投与回数を減らす(中止する)ことは、薬の効果を減少(消失)させます。必ず主治医に相談してください。

副作用はありますか?
よく起こるのは、発熱(63.0%)、頭痛(31.0%)、倦怠感(20.0%)、関節痛(11.0%)、悪寒(6.0%)などの「感冒様症候群」と呼ばれる、風邪に似た症状です。注射をした部位に発赤(43.0%)、痛み(18.5%)、しこり(16.0%)、かゆみ(8.0%)などの「注射部位反応」が出ることもあります。ベタフェロン® を使いはじめた頃には、これらの副作用がよく出ますが、多くは時間の経過とともに軽快・消失していきます。
そのほか、不安感や絶望感が生じる抑うつ状態(6.5%)になることがあります。リンパ球の減少や肝機能障害が起こることもあります。

副作用が出たらどうすれば良いですか?
副作用の多くは対処できるものです。感冒様症候群に対しては解熱鎮痛剤を服用し、注射部位反応に対しては、注射できるところを毎回変えて防ぎます。抑うつ状態も抗うつ剤や精神療法でコントロールできることが多いので、精神的な変化に気づいた時は、すぐに主治医に相談しましょう。
副作用の出方、種類、程度、治まり方には個人差があります。たとえば、感冒様症候群は通常、使いはじめてから2〜3ヶ月で治まってきますが、3ヶ月以上続くことも、逆に数日で治まることもあります。

進行型のMSにも効きますか?
海外の臨床試験では、ベタフェロン® が二次進行MSの車いす生活に至るまでの期間を延ばしたことが示されました。このことから、ベタフェロン® は二次進行型MSにも効果があると考えられますが、特に慢性進行中に急性増悪がみられる場合に有効のようです。

視神経脊髄型MSにも効きますか?
日本国内の臨床試験では、MSにおけるベタフェロン® の効果が海外と同様であることが確認されました。また日本人に比較的多い、いわゆる視神経脊髄型MSにおいても、ベタフェロン® により再発が減少する傾向がみられました。
しかし「視神経脊髄型MSの中には、ベタフェロン® が合わないタイプがあるのではないか」ということが報告されており、現在、厚生労働省の研究班が調査しています。また、視神経脊髄型MSの診断自体、難しい場合もあるため、この点も含めて主治医とよく相談してください。

医療費はどうなりますか?
ベタフェロン® はMSの治療薬として承認されているため、特定疾患の制度が利用できます。MSと認定された患者さんであれば、ベタフェロン® を使った治療も、一部公費負担されます。

どのように使うのですか?
ベタフェロン® は皮下注射薬です。「凍結乾燥(フリーズドライ)」された状態でガラスビンに入っていて、注射する直前に溶解液で溶かして使います。凍結乾燥してあるのは、薬剤の安定性を保つためです。
注射は、腹部や大腿部などのやわらかい部位に、2日に1回おこないます。販売企業より提供されているマニュアルやビデオを見ながら、病院で指導を受けます。

どこに注射をしますか?
腹部、大腿部、上腕部、臀部などの、皮下脂肪が厚くやわらかい部位に注射をします。自分で注射をする場合は腹部と大腿部に、家族などに手伝ってもらえる場合は、そのほか上腕部と臀部に、毎回部位を変えながら注射をします。

はじめる時は入院するのですか?
薬剤の調整・注射を正確にできるようにするため、治療をはじめる時はしっかり指導を受ける必要があります。また、治療をはじめたばかりの頃は特に、発熱、頭痛、倦怠感などの副作用が出ることが多く、ベタフェロン® をはじめる時は1〜2週間の入院がすすめられています。入院をすることで、治療の意味や今後の不安などについて、医師や看護師と深く話をすることもできます。

毎回同じ時間に注射しないといけませんか?
安定した効果が得られるよう、同じ時間帯での注射がすすめられています。しかし厳密ではなく、少々時間が変わっても問題ありません。寝ている間に副作用が出終わってしまうように、就寝前の注射がすすめられていますが、就寝前でなくても構いません。

時差がある地域に行く時はどうすれば良いですか?
欧米など、昼夜逆転するような地域に行く場合は、注射の時間を遅らせるようにします。つまり就寝前に注射をしていた場合は、時間通りにすると、現地では昼間に注射をすることになってしまいます。この場合は、夜まで待ってから注射をします。

注射後、すぐお風呂に入れますか?
注射部の感染予防のために、また、副作用の感冒様症候群を予防するためにも、注射直後の入浴はすすめられていません。就寝前に注射をする人の多くは、入浴後しばらくして、体温が元の温度に下がった頃に注射をしているようです。注射直後に入浴する際は、注射部位をゴシゴシこすらないようにしましょう。
翌日の入浴では、通常通りに体を洗っても問題ありません。

注射をした後にすぐ外出して良いですか?
注射後は絶対安静ではないため、外出禁止ではありません。しかし、副作用を軽減させるためにも、ゆっくり過ごすことがすすめられています。特に感冒様症状に伴う倦怠感が出やすい場合は、体調に留意して注射の時間を上手に選びましょう。

注射するのを忘れてしまいました!
気づいた時点で注射をしてください。注射の日を忘れないように、
販売メーカーからは「ベタフェロンダイアリー」という手帳が提供されています。保険証サイズの手帳で、注射日と注射部位を記入できるようになっていて、気づいたことを記載するメモ帳もあります。
また、注射通知サービス「Club-B」もぜひご利用ください。

生活のリズムが変わることはありますか?
毎回同じ時間帯に注射をしていると、注射をすること自体は、徐々に生活の一部として慣れてきます。しかし、治療開始初期では特に副作用が多く出現し、中でも倦怠感の副作用が強い場合は、生活のリズムが変化してしまうかもしれません。
副作用の出方と程度は個々の患者さんで違っていて、生活リズムに支障を来すほど副作用が出る人もいれば、全く問題ない人もいます。副作用は通常、時間の経過と共に軽くなってきます。

どのように保管すれば良いですか?
ベタフェロン® は常温で保存できます。しかし30度あるいは氷点下になると変成する可能性があるため、真夏で室内が30度を超えるようであれば、冷蔵庫に保管します。逆に、氷点下での保存も避けたほうが良いので、寒い地域では凍結しないよう、冬場に冷蔵庫に入れるようにしましょう。
冷蔵庫に入れた場合は、必ず常温に戻してから注射してください。注射部位反応が強くおそれがあります。

どうしても今日は注射したくありません。
ベタフェロン® は1993年に米国で発売されて以来、世界77ヶ国で10万人以上の患者さんが使っています。注射をする時、その仲間たちを思ってみましょう。
また、音楽をかけたり、好きな香りのお香を焚いたり、家族や友達に励ましてもらうのも効果的です。注射通知サービス「Club-B」もぜひご利用ください。

注射が痛いので、困っています。
まず、同じ部分に注射をし続けていないか、ダイアリーなどでチェックしてみましょう。次に、針を刺す部分に痛みを集中させないように、注射する部位の近くを指で強く圧迫します。針を刺す数秒前から圧迫し、針を刺してベタフェロン® を注入し、抜くまで圧迫しておくと、意識が多少分散されるようです。
また、注射への緊張感を紛らわすために、音楽をかけたりテレビを付けたり、会話などで気分転換をするようにしてみましょう。
注射前に深呼吸を数回し、呼気に合わせて針を刺し、次の呼気に合わせてピストンを押すこともすすめられています。「ペンレス」という貼付用麻酔薬もあるので、主治医に相談してみてください。

注射部位反応のせいで、もう注射する場所がありません。
赤くなったり、しこったりしているところは、注射を避けてください。反応がひどい場合は主治医に相談しましょう。皮下脂肪が薄い人は筋肉注射になる可能性もあるので、皮下注射法について主治医と相談したほうが良いでしょう。
注射の仕方をもう一度チェックしてみましょう。
- 清潔は保たれているか?
→マニュアルを見直してみましょう。
- ベタフェロン® をしっかり溶かしているか?
→泡立てない程度に、静かに回して溶かしましょう。
- 注射部位をしっかり消毒しているか?
- 消毒が乾いてから注射をしているか?
→アルコールが乾いてから注射しましょう。
- 針は垂直に、すばやく、根本まで刺しているか?
→皮下脂肪が薄くても、必ず根本まで刺しましょう。
- 冷たいベタフェロン® を注射していないか?
→冷蔵庫で保管する場合は、常温に戻してから使いましょう。

旅行に行く時の注意点はありますか?(2008年7月26日更新)
調整に失敗した場合に備えて、必要日数分よりも余分に準備しておくと良いでしょう。真夏に持ち歩く時は、アイスパックなどで温度が上がりすぎないように気を付けます。この時、ベタフェロン® を凍らせないように注意しましょう。
ベタフェロン® は空港のX線検査を通過できます。注射器を機内に持ち込む場合は、手荷物検査でその旨を伝えます。注射の使用目的を聞かれる可能性が高いので、病名が証明できるもののコピーを携帯しておくと良いでしょう。海外旅行に行く際は、トラブルを避けるために、英文の診断書と薬剤証明書を携帯することをおすすめします。
航空会社(日本航空、全日空)では、注射器を機内に持ち込む場合は、予約の時点で伝えておくことをすすめています。
※空港では原則「注射針は、機内で使用するもの以外は持ち込み禁止」とされています。しかし現状として国内の場合、手荷物検査の際に針を持参していることを伝えれば、問題ないようです。

プール・温泉には入れますか? 日に当てて大丈夫ですか?
注射部位の感染予防のためには、注射直後にプールや温泉に入ることはおすすめできません。注射後数時間が経過している場合は特に制限はありませんが、もともと注射部位反応が出やすい人は、皮膚の様子を観察しながら入りましょう。
注射部位を日光を当ててはいけないことはありません。しかし、過度の日焼けはMSに良くないことや、注射部位を大切に保護するという観点から、紫外線を浴びるような場合は、日焼け止めクリームを使い、最近の注射部位は日光に当てないようにしましょう。

仕事は続けられますか?
ベタフェロン® をはじめる時は、通常は1〜2週間入院します。退院後は、副作用の対処法を上手く身につけるためにも、自宅でゆっくり過ごすことが必要かもしれません。そのため、治療開始時は休みを取って注射方法や副作用の扱い方を身につけることが必要ですが、慣れれば社会復帰できます。

食事制限はありますか?
ベタフェロン® 使用中の食事制限はありません。

お酒を飲んでも良いですか?
アルコールとベタフェロン® を併用していけないということはありません。しかし、発熱、頭痛などの感冒様症候群の副作用がある場合は、飲酒による体温上昇のために、不快感が増すかもしれません。
また、ベタフェロン® は肝臓で分解されます。アルコールによる肝臓への負担も考えると、ベタフェロン® とアルコールを同時に服用することは避けたほうが良いかもしれません。
これらのことから、ベタフェロン® を使っている人の多くは、飲み会を、なるべく注射日ではない日に設定・参加しているようです。注射日に飲酒をする場合は、飲酒後少し時間を空けてから注射をしましょう。

妊娠・出産に影響ありますか?
ベタフェロン® の使用経験により、妊娠・出産できなくなることはありません。ただし、妊娠中は流産の可能性があるため、ベタフェロン® を使えません。妊娠は使用をやめてから一定期間が経過している必要があります。出産を希望される時は必ず主治医に相談しましょう。
出産後はベタフェロン® を使っても問題ありませんが、授乳中の人は使用を控えてください。

市販の薬を併用しても大丈夫ですか?
ベタフェロン® は、漢方薬の「小柴胡湯(しょうさいことう)」とは併用できません。ほかのインターフェロン製剤で、小柴胡湯との併用により間質性肺炎を発症した報告があるからです。小柴胡湯のどの成分が原因なのかは不明です。安全性を考えて、ベタフェロン® 使用中は漢方薬系の薬剤を併用しないほうが無難です。
そのほか併用を注意すべき薬剤として、抗てんかん薬、アンチピリン(解熱鎮痛剤)、ワルファリン(抗凝固薬)、テオフィリン(喘息治療薬)などがあります。ベタフェロン® と併用するとこれらの薬剤の作用が強くなることがあります。そのほかの市販薬についても、服用する際は主治医に相談するようにしましょう。

ベタフェロン® を使ってるのに再発しました…
MSは、その多くが再発と寛解をくり返す病気です。ベタフェロン® には再発回数を減少させる効果がありますが、完全になくせるとは限りません。再発を減らし、再発時の重症度を軽くすることで、長期的な治療効果を期待していく薬なので、ベタフェロン® を使っていても再発する可能性があることを理解して治療に臨むことが大切です。
なお、再発時には通常、ステロイド療法をおこないます。ベタフェロン® とステロイド薬は併用できます。
