このホームページでは「多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS )」の情報を提供しています。

 



NMOとMS


読売新聞夕刊記事について(2008/04/26)

読売新聞夕刊に2008年4月18日、MSとインターフェロン・ベータ療法についての記事が紹介されました。この内容はここ最近、議論が続いていて、全ての結論はまだ明確に出されていません。しかしこの記事が現在の治療に影響を与えかねないと判断し、MSキャビンとしての現時点での説明文を示すことにしました。明確な結論が出ていない以上、調査研究の進歩に合わせて本説明文の内容が変わる可能性があることををご留意ください。



これまでMSは「脳病巣があったら通常型」「視神経と脊髄だけなら視神経脊髄型」と分類されていました。しかし最近、視神経脊髄型MSとされてきた人の多くは「視神経脊髄炎(NMO)」であることがわかってきました。

このNMOとMSは、病巣のでき方、検査結果、治療の反応性が違います。

そして「抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体・こうえーきゅーぴーふぉーこうたい)」という抗体が発見され、MSでは陰性なのに対してNMOの8〜9割は陽性であることから、MSとNMOを鑑別診断するにあたっては、この抗AQP4抗体が重要であることがわかってきています。また、この抗体が見つかってから、NMOにも脳病巣ができることがあることもわかってきました。

欧米では「MSとNMOは別の疾患」として分けられつつあります。日本では、別の疾患として分けることについて、研究者の間で議論中です。しかし別疾患として分けるか分けないかの結論が出ていないものの「病態が違っている以上、治療を分けて考えていく必要がある」という考えは、神経内科医の間で広がりつつあります。

日本神経免疫学会で2008年4月18日に発表された厚生労働省研究班の全国調査結果をもとに、記事を解説します。



(1)「MSの37%が症状の悪化や副作用でインターフェロン・ベータ治療を中止」という記載について

中止理由の正確な内訳は次のとおりです。

副作用(40%)、患者の希望(30%)、効果不充分・無効(19%)、原疾患の増悪(11%)
※これらは治療効果に関する、主治医の印象です。

この結果を、抗AQP4抗体の有無で分けると、それぞれの中における理由の割合は次のようになります。

抗AQP4抗体
陽性
原疾患の増悪(36%)、効果不充分・無効(29%)、
抗AQP4抗体が陽性であることの事実(21%)
抗AQP4抗体
陰性
副作用(55%)、効果不充分・無効(25%)

つまり「抗AQP4抗体陽性の人では、インターフェロン・ベータ療法の有効性がみられない」と主治医が判断した患者さんの割合が高いということです。



(2)「視神経脊髄型と呼ばれるタイプの場合、抗体が陽性だった17人中14人が治療中止」という記載について

17人中14人が治療を中止していたのは「抗AQP4抗体が陽性」の人たちです。

日本には、次の2つの考え方があり、これについて、まだ議論中です。
・抗AQP4抗体が陽性であるNMOと、この抗体が陰性のMSは、違う病気として分けるべき
・MS全体の中で、視神経脊髄型MSの中の1つのタイプとしてNMOが存在する

現在は「抗AQP4抗体の有無、つまりNMOとMSでは治療も分けて考えていく必要がある」という認識のもと、学会で新しい治療ガイドラインを作成中です。

また「関連学会では、一時的に症状が悪化しても進行を抑える可能性があるので薬の使用を中止すべきではない、とする治療指針を見直しはじめている」と書かれています。「病状が悪化しても治療を続ける」という印象を与えますが、実際にはインターフェロン・ベータを含めてすべての治療薬の効果は、決して完全ではありません。「インターフェロン・ベータはMSの再発を3割抑える」というのは、治療によってほとんど再発しなくなる患者さんもいますが、ある程度の再発が起こる患者さんもいて、この薬を使っている患者さん全体の3割の再発を減少させるということです。治療の反応性は個々人で違います。



この記事によって、現在インターフェロン・ベータを上手く続けているMS患者さんが、充分な診察と検査を受けずに治療を中止、あるいは、この薬の効果が期待されるMS患者さんが治療開始を思いとどまることで、治療の機会が失われる可能性も懸念しています。国際的に、MSの再発や病状進行を抑制し、MRI所見を改善する治療効果が証明された薬剤のうち、現時点において日本で承認されているのは2種類のインターフェロン・ベータだけだからです。

現在の治療、あるいは今後の治療が心配な方は、MSキャビンからMS専門医をご紹介できるので、心配な方はどうぞお問い合わせください。お住まいの地域から、なるべく近い先生をご紹介いたします。



読売新聞朝刊記事について(2007/07/25)

読売新聞朝刊に2007年7月25日、MSとインターフェロン療法についての記事が紹介されました。厚労省研究班長をはじめ、国内のMS専門の先生たちによると、現在インターフェロン療法を上手く続けている方は、心配しないで大丈夫です。

視神経脊髄型MSと思われる人や、インターフェロン療法の効果に疑問がある人は、研究班の調査結果を待っていただくと共に、主治医にご相談ください。

MSキャビンからMS専門医をご紹介できるので、ご心配な方はどうぞお問い合わせください。お住まいの地域から、なるべく近い先生をご紹介いたします。



研究班のコメント

厚生労働省化学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業
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関連年表(2008/04/26現在)

19世紀半ば MSの概念が記載された
19世紀末 NMOの症例が報告された
その後、NMOの臨床的特徴、検査所見、病理学的所見がMSと異なることが指摘され、NMOはMSの1つのタイプなのか、それともMSとは別の病気なのかが議論されてきた
1995年〜1999年 インターフェロン・ベータ1b臨床試験
2000年11月 インターフェロン・ベータ1b(商品名:ベタフェロン)
日本シエーリング株式会社(現:バイエル薬品株式会社)より発売
2000年〜2002年 インターフェロン・ベータ1a臨床試験
2004年〜2005年 抗AQP4抗体が発見され、以後NMOをMSと区別する考えが広まる
2006年11月 インターフェロン・ベータ1a(商品名:アボネックス)
バイオジェン・アイデック・ジャパン株式会社より発売
2007年6月 日本シエーリング株式会社(現:バイエル薬品株式会社)と、バイオジェン・アイデック・ジャパン株式会社より「インターフェロンベータによる多発性硬化症(MS)治療に関する最近の知見について」が医療施設に配布されはじめる
2007年7月上旬 厚生労働省研究班の日本人におけるインターフェロン・ベータ製剤の使用実態に関する全国調査開始(2004年におこなったインターフェロン・ベータ製剤の使用実態調査を補遺する再調査)
2007年7月25日 読売新聞報道
2008年4月18日 厚生労働省研究班の日本人におけるインターフェロン・ベータ製剤の使用実態に関する全国調査結果発表
2008年4月18日 読売新聞報道(夕刊)

更新:2008年4月26日(新規公開:2007年7月25日)
文:中田郷子 / MSキャビン(非医療従事者)

本文は医療監修をいただいていますが、議論に影響を与える可能性を考慮し、
MSキャビンの判断で監修者は匿名とさせていただくことを、ご容赦ください。
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