カテゴリー 近藤誉之先生|MSキャビン(多発性硬化症 視神経脊髄炎)

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中田郷子のブログ

近藤誉之先生一覧

近藤誉之(関西医科大学総合医療センター脳神経内科)より

 

 

ここで書くことは、MSキャビンに関わる医師の総意ではないかもしれません。あくまで、近藤の思うところであることをご承知ください。

 

 

さて、本日の話題です。

 

 

中田さんと相談をして、タイサブリのお話を2021年6月20日にすることにしました。今、話題といえばケシンプタなのに、どうしてかと思われる人も多いかと思います。それでも、タイサブリのことを話題にするのは、製薬会社のプロモーションの仕方が非常に危ないのではないのかと思ったからです。添付文書通りという不適正使用によって、患者さんを危険に晒す可能性があるのではないかと思ったからです。

 

 

タイサブリの使用経験のある医師は、非常に良い薬だとの印象を持つことは多いと思います。使用中に進行する方も残念ながらいますが、車椅子だった方が歩いて来院されるようになることもあります。ただ、進行性多巣性白質脳症(PML:60%-70%の人が感染しているJC ウイルスが起こす命に関わる脳の病気)を発症するリスクを恐れて使用を控える傾向がかつてありました。かつてと書いたのは、以前よりタイサブリを積極的に使用するMS専門家が増えたからです。自分も、70名ぐらいの方に使用しています。

 

 

一方、未だに、一人もタイサブリを使用しない県もあったりします。ケシンプタが出てかなり変わると思いますが、タイサブリ以外では進行してしまう患者さんはどの県にでもいるでしょうから、そういった患者さんのことを思うと非常に心配です。

 

 

では、どうしてMS専門家の多くがタイサブリを使用するようになったのでしょうか?それは、PMLのリスクは投与間隔を延長することによって、大きく減少することがわかったからです。投与間隔を延長しても、10 年使用すると2名の方がPMLを発症することが報告されたり、PMLリスクは0にならないようですが、他薬剤よりリスクが大きいとは言えない状況だと思います。結果として、多くのMS専門家が5-8週間隔の投与を行っています。

 

 

製薬会社は、自社の薬剤のプロモーションをするために、講演会を企画します。医師も、薬に問題がなければ、協力します。また、講師を務めることで、専門家として認知されることにもなり、医師の方にもメリットがあります。

 

 

医師の方で、製薬会社の後援してくれる講演会を企画することもあります。今、医療倫理の講演会を企画していて、協和発酵が後援してくれることになりました。ただ、こういった形は最近では例外的で自社製品と関わりのない講演会は困難になりました。

 

 

現在、タイサブリの講演会では、薬剤がMS専門家によって積極的に使用されていることが紹介されています。それ自体はいいことなのですが、どういう投与間隔で行われているかは聴き手には理解しにくくなっています。製薬会社の方針で、スライドなどを使用したわかりやすい形で投与間隔の延長が安全性を高めることを明示してはいけないことになっているからです。

 

 

製薬会社は薬を使用してほしいためにプロモーションをしながら、安全に使用できる方法に関してはわかりやすい形で提示することは拒んでいます。それぞれの演者の医師は、聴衆に投与期間を工夫していることを口頭で付け加えます。みなさん、大変努力をしています。ですが、自分からみると、今の制約された形では、投与間隔が延長するとリスクが減ることは、それを前もって知っている医師にしか伝わらないのではと感じています。

 

 

講演会では、投与間隔の延長が安全性を高めることよりも、タイサブリを使用するメリットばかりが聴き手には印象付けられるような危惧を感じています。タイサブリで改善したり、利益をえた患者さんが紹介され、使わないで進行するリスクが強調されます。患者さんの紹介でも、その患者さんに対して投与間隔をどうしたのかは明示できないのです。もちろん、座長の先生が「投与間隔は工夫されたのですね」と訊いたりしてはいるのですが。

 

 

一番最近の会では、1300人の医師が視聴したようです。MSの診療にある程度詳しい先生は理解したと思いますが、タイサブリの有効性ばかりが印象づけられて、添付文書通りに4週毎に投与する医師も現れるのではないかと想像しました。

 

 

製薬会社には何回も抗議しています。添付文書以外の投与法を会社後援の講演会で話すことは、製薬会社間で決めたルールに反するというのが、投与間隔を明示できない理由だそうです。製薬会社間のムラのルールに縛られて、安全に使用する方法を提示できないのなら、投与間隔延長を前提として、多くのMS専門家がタイサブリを使用している現状を紹介することは倫理的におかしいと考えています。ムラをみるより、患者をみろと思います。ただ、トラブルが怖い担当者の保身なのではと疑ったりもします。より安全に使用する方法の提示制限をすることはどのような理由をつけられても納得できません。

 

 

20日はそういったことをお話しします。
タイサブリの同意書の矛盾について、PMLのこともお話しします。余裕があれば、ブログでも前もって書きたいと思います。

 

 

中田より:本件について、2021年6月20日(日)13:00から、MSキャビンYouTubeチャンネルにてライブ配信です。近藤先生と中田と2人でお話します。
MSキャビンYouTubeチャンネル

2021.6.11

(近藤誉之先生より)

おひさしぶりです。〆切の原稿、書類がたくさんあって間に合ってないのもたくさんあって、ここに記事を書くと〆切先にやれと言われそうな気がして更新が滞りがちでした。ごめんなさい。

 

ところでネット情報によりますと、MSに日光は悪いのですよ、という情報を散見します。この一部は陽に当たると体温が上昇して調子が悪くなるということを基礎にしているのかもしれません。

 

でも、日光にあたると免疫低下するとか免疫のバランスがおかしくなるとかは間違ってますから信じないでください。

 

日光にあたるほどMSは軽症化する、子供の頃の日光の照射低下が発症に関係すると言われています。北海道や緯度が高いほどMSが多いのも日照時間と関係すると言われています。

 

日光にあたるとビタミンDが増えます。ビタミンDは免疫修飾作用があるんです。だから、北欧はMSが非常に多いのですが、ビタミンDが含まれる鮭を食べるノルウェーは意外に少ないです。

 

でも中田理事長からは北海道で鮭食べてても多いのはなぜよと詰問されてしまいました。うーーん。

 

もちろん、日焼けしてヒリヒリして火傷になるような状況がいいかどうかは別問題かとは思っています。また陽にあたり身体が温まり、調子が悪くなることはありえるので患者さんによっては注意が必要です。でも、結局陽にあたる方がMSの進行が抑えられるというのも本当です。

 

ネットに書きながら言うのもブーメランですが、どんな偉い先生のサイトでも、どんな権威のある会社の書いたことでも、あれ、っと思うことがあるものです。

2015.12.17

(近藤誉之先生より)

京都多発性硬化症ラボで書いた記事です。 疼痛に苦しむ患者さんに少し役にたっていることを示唆するようなコメントをいただきましたのでこちらにも転記してみます。

6割ぐらいのMSの患者さんが疼痛やしびれを感じていると言われています。MSの患者さんが感じる疼痛やしびれは一般の患者さんの感じる疼痛やしびれよりもより強く、日常生活の障害となることが多いとの報告もあります。NMOの疼痛やしびれはさらに強いことが多いと多くの神経内科医師が感じています。

一方、疼痛やしびれを過不足なく評価することは医師にとって困難なものです。疼痛やしびれは主観的なものです。医療者は疼痛やしびれがどうして起こっているかわからない場合、患者さんへの共感を示せなくなることがあります。例えば、画像等で認識可能な病変部位と疼痛の関連が解剖学的に説明できない場合です。


理解できないことから生じる患者さんへの非共感によって十分な薬物治療がされないという状況が生じることがあります。また、患者さんの訴えに従って薬剤を加えていっても実際の症状は緩和されず、覚醒度の低下、精神症状、吐き気、めまい、便秘等の副作用がより問題になることもあります。

残念ながら、私も含めて疼痛やしびれに関して十分な教育を受けている神経内科医はそう多くありません。

MSやNMOでコントロール困難な疼痛に、両側下肢に生じる疼痛があります。その疼痛は時には体幹や上肢にも及ぶことがあります。 燃えるような、針で突き刺すような、あるいはしめつけられるようなしつこい痛みでしばしば日常生活を制限します。この疼痛は通常の鎮痛剤はほぼ無効です。夜間に増悪したり、運動や仕事によって強くなったりします。


また、疼痛の強さは温度や湿度によっても変動します。外気温とは無関係に下肢が暖かいとか冷たくてつらいと訴える人もいます。刺激によって刺激の程度に不釣り合いな強い痛みを訴える人もいます。こういった疼痛がNMOの方に特に多いのは、おそらく脊髄病変に関連した症状だからです。


脊髄病変が想定されても画像では確認できないこともあります。画像診断を優先する医師はこのような痛みを精神的なものとしてしまうこともあります。後で述べるように疼痛は精神科的アプローチも重要です。しかし、もともとの原因となる病気を軽視して精神科/心療内科にまかせてしまうのも正しいとは思えません。

神経内科領域でこういった疼痛にまず使用されることの多い薬剤は、抗うつ剤、抗てんかん薬です。とはいえ、こういった薬剤で十分な効果が得られることは例外的です。より強い向精神薬やオピオイド(癌疼痛の時に使用される麻薬)を使用することもあります。しかし、薬物療法を精一杯しても患者さんの疼痛、しびれは十分に改善しないことも少なくありません。


国立精神神経センターで、NMOの発症に関係のあるサイトカイン(IL-6)の働きをブロックすると、再発抑制だけでなく疼痛にも効果のあったということは、難治性疼痛が簡単に精神的なものとされることへの大きな警鐘でもあります。


しかし、矛盾するようですが、精神的な要素が疼痛に影響するのもまた事実です。疼痛は鬱状態でひどくなります。疼痛は睡眠の妨げにもなりますが、睡眠障害も疼痛を増悪させます。心配や疲労も同様です。否定的な考え方をしている時や過度の不安も疼痛の増悪因子として知られています。

欧米の疼痛コントロールの実務書には、患者さん自身も疼痛を含めた現在の状況を正しく認識し、受け入れることが重要であると記載されています。医療者の役目としては、患者さんがセルフマネージメント出来るように指導する必要性も記載されています。ヨガや心理療法の効能も記載されています。また患者さんや家族への社会的サポートがない状況での疼痛の緩和が難しいことも記載されています。


私自身は患者さんに、精神的社会的状況が疼痛に大きく関与することをお話しています。問題は、私自身が内心「痛くてたまらない人に痛みを受け入れては」なんて、こちらから誘導できるのだろうかと思ってしまうことです。私自身はその点で力不足です。苦しんでいる人に苦しみを受け入れるようにと言ったって役にたつのだろうかと思うこともあります。


それでも、疼痛やしびれを診察の度に訴えていた患者さんが、いつの間にか診察の時に訴えなくなることもあります。こちらから訊くと「痛みは変わらないかもしれないけど、こだわってても仕様がないし」などの返事が返ってきたりします。そういった患者さんは自然に自分で疼痛を受け入れるプロセスをたどったのだと思います。

2015.4.28

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