薬の副作用への考え方、伝え方|MSキャビン(多発性硬化症 視神経脊髄炎)

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近藤誉之のブログ

薬の副作用への考え方、伝え方

この記事は少しめんどくさいかもしれないので、まずこの記事を通じて伝えたいことを書いてみます。

 

どの薬であっても、薬の効果だけではなくリスクを医師は伝える必要があります。父親主義的な患者さんに不安を生じさせないための配慮でも、リスクを伝えないのは今日的な価値観からは問題があります。

 

現在のMSの薬のどれであっても全ての患者さんに有効だということはありません。また全く有害事象のないものもありません。薬剤の正しい使用法を身につけていくためにも有害事象を医療者は共有する必要があります。そしてそれは患者さんの知る権利でもあります。

 

一般的にある薬Aとある事柄Bと関連があるというためには、Aを服用している人に起こったBの頻度と薬を服用していない人に起こった頻度を解析します。Aの服用時にBが起こった頻度とA非服用時の頻度の差が偶然によって起こりうるかどうかを数学的に計算し、偶然におこる確率が一定の確率より小さい時(例えば5%以下)、AとBは関連がある(統計的有意差)といえます。

 

通常、AとBが偶然におこる確率が5.1%以上あるという解析結果になると関連があるとはいえないことになります。この場合、もう少し大規模な解析にすれば相関が証明できることもあります。

 

さて、MRIで造影剤を使用する時の説明を思い出してください。30-100万人に1人死亡しているという説明を受けていると思います。このような頻度の少ない副作用は、統計的有意差を持って関連があると認定するのは困難です。造影剤を投与してからの時間関係、生物学的反応として矛盾をしていないことから強く疑い、同意書をとる必要まであるのです。めったにおこらないから患者さんに説明しないという価値観は今日的にはゆるされません。

 

新しく認可された薬では、起こった有害事象(薬物との因果関係を認定せずに薬物を投与された患者に生じた好ましくない、または意図しない徴候、症状)が報告された場合、それが深刻なものであれば製薬会社も添付文書に記載し、注意を喚起します。統計的有意差がないからといって相関関係を否定することもできないから当然のことです。

 

有害な事象が起こっても各医師の判断によっては報告されないことも多くあります。ある薬の使用時には、20年使用して起きていなかったはずの重篤な有害事象が実は複数例起こっていたことが20年経過して明らかになった薬もあります。

 

とはいえ、認可された薬は多くの厳しい臨床試験を経ています。現在認可されているMSの薬は、正しい使用法をすれば有害な反応(リスク)を起こすより患者さんにとって有益な反応(ベネフィット)を起こす可能性がはるかに高い薬ばかりです。

 

しかし、今日のMSの薬はどの薬も良い点と悪い点があります。有害な副作用(薬との因果関係のある事象)のない薬はありません。特に免疫を動かす薬であるMS再発予防の薬は感染リスクと発がんリスクを変える可能性があります。そういったリスクは長期間丁寧にフォローをする必要があります。今の時点でそういったリスクに関して一定の評価を与えることができるのはアボネックス、ベタフェロン、コパキソンだけです。

 

有害事情が起こった時に、薬との関与をすぐに否定するのは傲慢であると思います。起こっている重篤な有害事象を患者さんに伝えることもなく、患者さんから聴き取った有害事象を薬と関係のないと切り捨てることは今の医師の倫理観では認めがたいことだと思います。まして、統計的有意差はないからとの理由で臓器移植や死亡に至った状況を最初から関係ないと切り捨てて報告しないようなことは、将来私たちが正しい判断をする材料をみずから捨てることになります。

 

もちろん、造影剤による死亡例があってもほとんどの医療者は造影剤を使用する検査を患者さんに勧め、患者さんも受け入れます。今のMSの薬は正しく使用すれば、安全性の比較的高いものばかりであることは私もそう思います。

 

新しい薬で重篤な副作用を起こした症例では、今から振り返れば過剰なステロイドパルスの使用などがありました。残念ですが、そういった経験を経て、それを共有することによってだんだんと医療者も正しい使用法を認識しています。そして、判明している自分におこりうる重篤な有害事象に関しては患者さんの知る権利でもあります。

 

2016.3.7

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