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近藤誉之のブログ

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12月に入って数日だけれど入院したりしたこともあり、少し仕事を絞りました。おかげで、いつもより少し穏やかな年末になっています。年賀状はこれからなんですけど。

 

ところで、僕自身のフィンゴリモド(イムセラ®・ジレニア®)に対するリスク評価は変わっていないのですけど今年はフィンゴリモドへの評価が一変した年になったのではないでしょうか。MS専門にしているかなり多くの先生方が昨年まではフィンゴリモドをそれほどリスクのない薬、NEDA4(疾患活動性の証拠4つがない:再発、新規脳病変、身体障害進行なし、脳萎縮なし)を目指すのが、今後のMS診療のあるべき姿である、そのためにはフィンゴリモドを積極的に使用するべきだと患者さんの会でも語り、医師向けの講演会でも語っていました。

 

講演会を後援する製薬会社もそういった先生を講師として呼び、医師への啓蒙活動?をしていました。

 

病気に対する疾患概念は時代とともに変わります。新しい知見や社会状況が影響しますが、薬剤の登場も大きな影響があります。昨今の新しい診断基準はMS治療薬が登場し、その福音を患者さんに早期より届けたいとの状況があったことを背景に作成されています。前述のNEDA4はフィンゴリモド発売に伴って主張され始めた概念です。実際にはわざわざそんな概念など作ろうが、作るまいが、より強い有効性のある薬剤の方がいいに決まっています。ただし、重篤な有害事象が起こるリスクが同じならですが。

 

思い返すと、イムセラ®発売後1年で製薬会社は発売記念講演会を開き、その際にはイムセラ®が安全だという先生を国内外から招聘し、最後の会社の代表の方の挨拶では安全性が担保されたと胸を張っていました。僕は、フィンゴリモドはリスクを意識しながら必要な患者さんに使用すべきだと考えていましたので、会社に相当な抗議をしました。担当者には、自分の娘がMSになったらすぐにイムセラ®を服用させるんだな、それで怖くないのか、とまでいった記憶がありますけど、会社は拝聴しているふりをしながらも本音は馬耳東風でした。

 

その状況がどうして今年に劇的に変わったかというと、フィンゴリモドを服用している国内の患者さんから進行性多巢性白質脳症(PML)が3人発症していることが今年の始めにわかったからです(現在は4人の患者さんが確認され、5人目の疑い症例の調査もされています)。PMLは6−7割の人が感染しているJCウイルスによる脳疾患です。発症後治療しないと、病変はどんどん拡大していき、寝たきりになったり、命を落としうる怖い病気です。

 

ちょうどテクフィデラ®が発売になったこともあり、各地でフィンゴリモドからテクフィデラ®に薬剤が変更されました。その状況を「まあ、そうだろうな」と思いながら、2つの点で違和感を感じていました。

 

まず、1つはPMLの発症は確かに日本に偏在はしているけれど、今回の事態が全く予想できないものだったのかといえばそうではなかったと思います。元々、タイサブリ®使用中のPMLも使用後2年を経過して併発するようになります。ですから、発売1年で安全宣言できる話ではないのはその1点でも明らかです。

 

リンパ球減少は一般的なPMLのリスクですが、タイサブリ®ではある特定のリンパ球が減少するとPMLのリスクが高くなるとの可能性が示されています。その特定のリンパ球とはフィンゴリモドで減少しているリンパ球です。「治療開始後数年経過してからPMLが発症する可能性」が高いと予見は困難だったと思いますが、否定はできなかったはずです。

 

第2に、PMLはMS治療薬の有害リスクとして象徴的なものですが、果たしてこの報告を冷静に捉えたときに、そもそもフィンゴリモドのリスク評価をそこまで変えるものだったのか、ということです。フィンゴリモドではすでに、クリプトコッカス感染症やヘルペス属ウイルス感染関連疾患による死亡例を含む重篤症例が報告されています。その中には、フィンゴリモドが安全だと強調されたが故の不適正使用例(ステロイドパルスの必要以上の併用など)を含みますが、こういった報告に対する多くの先生の反応は鈍いものでした。

 

僕自身もフィンゴリモドをたくさんの患者さんに使用しています。ですが、患者さんには、フィンゴリモドは生活の質を改善し、有効で本当にいい薬だけれど、わかっているリスク、わかっていないリスクを考えると、安易に使用すべきではない、との説明は必ずしていました。ですから、PMLが出現したというだけで治療変更を希望される患者さんはほとんどいませんでした。

 

さて、フィンゴリモドから他の薬剤に変更した多くの患者さんはどうなったでしょうか。多くの方は無事にスイッチできたようです。しかし、フィンゴモド離脱後のリバウンド(治療中止によって治療していない状況よりかえって疾患活動性が高くなる)をそれなりの数の患者さんが経験することになったのです。

 

このリバウンドはフィンゴリモド中止後3ヶ月ほど経過して発現します。通常の再発より大きな病変が出現することが多いようです。新しい病変の出現が完全になくなるのに数ヶ月かかることもあります。このリバウンドに対してどうすればいいのか、はまだ試行錯誤の段階です。

 

以下は私見になりますが、妊娠などを予定していなければ、経過が順調な方はフィンゴリモドを継続して行くのが無難かもしれません。その場合は定期的にMRIを撮影してPML病変を症状が出る前に見つけることが重要です。他剤への薬剤を希望する場合は、リバウンドに関して主治医とよく相談してください。リバウンドが起こる正確な頻度は今わかっていません。主治医が知らなければ教えてあげてください(MS非専門の神経内科医は知らない確率が高いです)。リバウンドは必ず時期がくれば治ります。

 

テクフィデラ®(フマル酸ジメチル)についても少し述べます。比較的安全性の高い薬剤と患者さんに説明をしています。PMLは5例(30万人の使用者)出ていますが、新しい薬剤であることを考えると頻度の評価はこれからです。

 

テクフィデラ®はリンパ球数の減少がなくても効果のある薬ですが、PMLはごく一部のリンパ球が減少した患者さんに出ているようです。リンパ球数をモニターすることでリスクのコントロールがある程度できそうなところが利点です。

 

テクフィデラ®はよく似た薬がドイツで乾癬に20年ほど使用されていた経験から安全性がある程度担保されていると考えられています。でも、実は、薬剤のリスクはそのリスクに注目していなければ浮き彫りにならないこともフマル酸による乾癬治療でわかります。フマル酸による乾癬治療下においてもPMLが12例以上発症していることがわかっていますが、テクフィデラ®が発売されるまでは乾癬治療におけるPMLの報告はありませんでした。

 

薬剤のリスク評価はとても困難です。そして安全だと盲信している状況では本当のリスク評価ができないことを示している事実だと思います。

2017.12.24

MSはご存知のように中枢神経の複数の箇所に炎症がおこることにより再発と寛解を繰り返す疾患です。最終的には他の疾患を除外してMSらしさを考慮して診断されるのですが、実はMSらしさというのも極めて曖昧なものです。

 

例えば、視神経脊髄炎(NMO)は抗アクアポリン4(AQP4)抗体が疾患バイオマーカーとして発見されるまでは日本ではMSと扱われてきました。現在でもMSとよく似た臨床経過をたどる疾患として認識されていますが、抗AQP4抗体の有無を問わなければ、NMOはMSらしいと言えるのでしょうか。

 

NMOでは1回の視神経炎で失明にいたることもありますが、MSでは1回の視神経炎で失明にいたることはまずないとされています。MSの視神経炎は左右同時におこることもまずありませんが、NMOでは両側に同時に視神経炎が起こることがあります。視神経の中でも障害される場所が異なるので、NMOで認める耳側半盲(耳側すなわち外側の視野が見えないこと)もMSではまずおきません。

 

脊髄炎の程度もNMOではより強いのが特徴で、1回の脊髄炎で車椅子になってしまうことがありえますが、MSではかなりの程度回復するのが普通です。NMOでおこる脳病変もMSとしては典型的でない方が多いと思います。髄液一般所見(細胞数,蛋白)もMSでは2/3が正常ですし、異常があっても正常より軽度の増加にとどまりますが、NMOでは著明な細胞数の増多や蛋白の増加がおこることがあります。

 

MSに限らないのですが、ある疾患を診断する時に、その疾患を示唆しない臨床症状、臨床経過、検査所見を「red flag(レッドフラッグ)」ということがあります。

 

NMOで起こりうることとして、上に挙げた1回のアタックで強い後遺症を残す視神経炎も、左右同時におこる視神経炎も、脊髄炎も、MSとしてはred flagということになりますし、髄液細胞数、蛋白の著しい増多もred flagです。3椎体以上の長い脊髄病変もred flagです。MSらしい病変が脳にないこともMSらしくない病変(この定義も難しい)があるのもred flagです。

 

ただし、現在の診断基準ではred flagが単独であったとしても診断を否定するものではありません。MSよりも臨床経過を説明しやすい他の疾患が同定できなければ原則としてMSと診断することは許容されます。英語では簡単に”no better explanation”という言葉が使用されるにすぎません。実際に、日本の臨床の場ではNMOなど他の疾患を示す検査所見が得られなければMSと診断されていることが多いのです。

 

次に、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)とMSについても考えてみましょう。ADEMは複数の病変が感染やワクチン接種後におこることの多い、脳に脱髄炎症が多発する単相性疾患(1回で終わる)です。比較的大きな多発性病変によって意識障害や脳高次機能障害、時にけいれん発作を起こす疾患です。

 

MSでは意識障害やけいれんで初発することは極めて稀とされています(red flag)。ですが、ADEMのようなエピソードを何回も繰り返す患者さんをどう考えたらいいでしょう。

 

一部には抗AQP4抗体が見つかったりしてNMO関連疾患であったりする訳ですが、多くの場合にははっきりと特定の疾患を示す検査所見は見つかりません。小児の場合は多相性ADEMという病態が定義されていますが、成人ではMSと診断されていることが少なくありません。小児の場合でも2回目のエピソードにおいて意識障害やけいれん、行動異常を伴わなければMSと診断する方が良いとされています。

 

また意識障害や行動異常を繰り返す場合でも、慢性的に長期にわたり再発を繰り返す場合はMSの診断をしてもかまわない旨も書かれていたりします。

 

つまり、Red flagがあった場合の診断は各施設、各医師によって様々です。非典型MSという言い方がされることもありますし、分類不能型脱髄疾患とすることもあります。東北大学のHPの中の「多発性硬化症と視神経脊髄炎の診断に関する基本的考え方」では「多発性硬化症と診断される症例の中には、典型例とともに非典型例も含まれていることを認識しておく必要があります」という記述があります。

 

Red flagのあるMSあるいは非典型MSの治療はどうしたら良いでしょうか。私もですが一部のMS専門家は、ステロイドや通常の免疫抑制薬を使用していると思います。それは、Red flagのあるMSと非典型MSで、MS-DMD(MSの再発予防薬)によって悪化する患者さんを多く経験した結果であり、たいていの場合ステロイドや免疫抑制剤で再発を防止できていることを実感しているからです。

 

ただしRed flagのあるMSに関して、MS-DMD(MSの再発予防薬)を使用しない方がいいと明確に書かれた論文はほとんどありません。エビデンスはないが、MS-DMDの使用を考慮してもよいと書かれている論文も少なくありません。このあたりは、答えが教科書や論文に書かれていない領域です。

 

個人的に面白いなと思ったのは、現在のMcDonaldの診断基準の前に最も汎用されていたPoserの診断基準を作ったPoser先生5、ADEM様エピソードを繰り返す患者さんをMSと診断すべきではないと怒っていますし、ステロイドの使用に関しても触れています。

 

私自身は現在、非典型MSという言葉をできるだけ使用しないようにしています。このMSは典型的でないというのはかなり感覚的で、おそらく専門家同士でも必ずしも一致しないでしょう。だから今まで論文化できず、エビデンスにならなかったと思うからです。Red flagの定義はいろいろな立場から様々なものがありますが、少なくとも定義づけることができます。

 

現在のred flagの概念はあくまで診断のためのもので、しかも100%診断を縛るものではありません。今の状況ではred flagがありながら単純にMSと診断され、MS-DMDを使用されている患者さんが少なからずいます。

 

MS専門の看板をあげていると、そういった患者さんが治療によって悪化して紹介されてくるケースを経験します。あるいは、治療効果のない状況で過ごしている患者さんもいます。個人的には、red flagのある患者さんの多くにはMS-DMD(特にインターフェロンβ製剤)はリスクがあると考えています。インターフェロンβ製剤はMSと病態の異なる自己免疫を悪化させる(例NMO)があるからです。

 

京都多発性硬化症ラボでは、自分たちで定義づけしたred flagをもとに薬剤への治療反応性を解析しはじめました。red flagを診断のために使うだけでなく、治療選択のために使用するということが必要なのだという考え方を広めたいからです。

2016.12.31

フィンゴリモド(ジレニア®/イムセラ®)服用中のリンパ球減少についてご質問がありましたので、解説します。

 

末梢血リンパ球数が問題になる最も大きな理由は、感染症を発症するリスクが高く、また重篤化しやすいからだと思います。

 

一般的にはリンパ球にして800以下になると感染リスクが上がるとされていると思います。ジレニア®/イムセラ®の治験でも白血球数3500以下、リンパ球数800以下の方は感染しやすい可能性があるとしてエントリーできませんでしたし、帯状疱疹のリスクなどは若干上昇すると思われます。

 

しかし実際に問題が起きやすいのは、リンパ球数が500以下になった時だと思います。ニューモシスティス肺炎もリンパ球数が500以下になった時に注意する必要があり、予防的に抗菌剤を使用するのが通常です。


進行性多巣性白質脳症(PML: JCウイルスによる重篤な脳症)のリスクは独立して論じる方がいいかもしれませんが、2017年春に発売されると思われるテクフィデラ®でPMLのリスクを考慮しなければいけないのは、リンパ球数が500以下の状態が長く続く場合と推察されています。

 

もっとも、通常の薬剤でリンパ球数500であってもPMLのリスクが上昇するとは言えません。リンパ球数減少の原因になっている薬剤や原因、そして病原体によっても感染症リスクは異なり、複雑です。

 

AIDSにおけるリンパ球と感染症などの発症リスクに関しては「HIVとそのはたらき(HIV/AIDS先端医療開発センター)」に示されています。示されているのはリンパ球数のデータそのものではなく、リンパ球の中で60-70%を占めるとされるCD4T細胞の数と感染症や悪性リンパ腫との相関です。

 

HIVではリンパ球数の中でCD4T細胞の割合も低下しますし、前述のように薬剤によるリンパ球数減少とHIV感染と同列に扱うことはできません。しかし、免疫不全になった時にかかりやすい感染症の順番は概ね一致しています。

 

また実際の感染リスクは、好中球数(白血球のリンパ球でない主要な細胞)や抗体の量などにも影響されます。通常は薬剤によって好中球が1000以下の場合や1000以下になることが予想される状況では好中球を増加させる薬剤を用いたり、治療選択の変更を検討します。

 

ジレニア®/イムセラ®以外の薬剤を使用している場合以外、リンパ球数の数だけで治療中止をすることは少ないと思います。疾患のコントロール不良が重篤な状況になりうる場合は感染症のリスクがあってもその治療を継続する場合もあります。もちろんγグロブリンなどを使用して免疫抑制剤やプレドニン®を減量することもありえます。リンパ球数減少自体が自己免疫が原因である場合は、あえて免疫抑制剤を使用する場合もあります。

 

自己免疫疾患におけるリンパ球数の減少にどう対応するのかには明確な答えはなく、疾患をコントロールできる範囲で感染症に関する予防投薬も行いながらリスクをできるだけ軽減するということしかありません。感染症が自己免疫疾患より、より重篤である場合は、それに応じた治療選択になるのだと思います。

 

他の薬剤とは異なり、ジレニア®/イムセラ®はリンパ球数の数と使用に関して基準が設けられています。適正使用ガイドでは、ジレニア®/イムセラ®ではリンパ球数<200を切った場合はだいたい2週間後にリンパ球数を再測定し、再び200を切れば一度中止し、リンパ球数が600以上になるのを待って再開することが推奨されています。

 

リンパ球数200の状態は感染リスクが非常に高い状態と考えられていますが、ジレニア®/イムセラ®では通常の状態に比べて大きくリンパ球数が減っても感染症頻度はそれほど増大しないとされています。それは、ジレニア®/イムセラ®の服用によって減りやすいリンパ球と減りにくいリンパ球があるからです。

 

ジレニア®/イムセラ®はリンパ球がリンパ組織から血液に移動できなくする薬です。ですが、そもそもリンパ球にはリンパ組織に戻っていくリンパ球とリンパ組織に戻らず体内を循環しているリンパ球があります。リンパ組織に元々戻らないリンパ球が体内のパトロールに重要と思われますが、このリンパ球はジレニア®/イムセラ®に大きな影響を受けないと考えているからです。とはいえ、帯状疱疹にはやはりかかりやくなります。

 

ステロイドも含めて一般的な免疫抑制剤は、パトロールしているリンパ組織に戻らないリンパ球数も減らします。ですから、ジレニア®/イムセラ®とステロイドや免疫抑制剤は併用してはいけません。再発期の急性期治療としてのステロイドパルスは禁忌とはされていませんし、必要な場合はあると思います。しかし、今までの診療に比べて十分な慎重さが必要です。

 

ジレニア®/イムセラ®使用中に感染症で亡くなられた患者さんの多くがステロイドパルスを頻回にされていたことは留意すべきです。また、リンパ組織からのリンパ球の動員が感染している場に妨げられているので、感染拡大につながりやすいという側面があります。

 

ジレニア®/イムセラ®の使用においてリンパ球数200という基準が設けられたのは大きな根拠があってのことではありません。だいたいこれぐらいなら大丈夫かなという程度の根拠です。製薬会社は発売前の臨床試験の結果などからリンパ球数が200以下になった患者さんとそうでない患者さんの間に感染症のなりやすさが異ならないというデータを医師の研究会でよく述べています。ある程度の根拠だとは思います。

 

けれども、感染リスクは長期使用によって明らかにされるものもあり、また臨床試験においてリンパ球数が200以下がどの程度続いていたのかなど詳細は不明です。とはいえ、今のところ、リンパ球数を200より多く保たなければいけないという根拠は希薄です。

 

製薬会社依頼の講演では言ってはいけないこととされていますが(添付文書にない、きちんとしたデータがないというのが理由)、リンパ球数200をきるあるいは200に近くなるとジレニア®/イムセラ®を隔日投与にする専門家は相当数います。私の場合もリンパ球数をみながら薬剤服用の頻度を調節した結果、週に1回投与になったものの再発抑制が十分にできている方もいます。ただし、毎日服用に比較して有効性が減少する可能性は否定できないとの意見はありえます。

 

ジレニア®/イムセラ®使用に関して、私自身はリンパ球数200を切らないように薬剤服用頻度を調整する、他の免疫抑制剤やステロイドと併用しない、急性期治療に関してはステロイドパルスを最小限に使用するということにしています。

2016.12.28

京都多発性硬化症ラボのブログでもお伝えしたのですが、9月30日をもって京大病院から関西医科大学総合医療センター(京阪沿線滝井駅徒歩3分)に異動することになりました。

 

関西医科大学総合医療センターは関西医科大学附属病院で神経内科の診療を行なっておりました。しかし、附属病院が枚方に移転し、神経内科も2013年に枚方にその機能を移しましたが、再び神経難病を重点とした診療科として再開をすることになりました。

 

パーキンソン病、脊髄小脳変性症や筋萎縮性側索硬化症などすべての神経難病患者さんの地域の拠り所となる診療を目指したいと思います。

 

多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)などの神経免疫病は、疾患概念の変遷や新規治療薬の開発がめざましく、より専門性が必要な分野です。私たちの強みを生かして、周辺の患者さんだけでなく、遠方の患者さんやMS専門でない神経内科の先生にとっても頼りになる存在になりたいと思っています。

 

というのは、MSやNMOなどの中枢神経脱髄疾患は、診断基準だけで診断をして治療方針を決めたり、NMOとMSの区別をするだけでは治療が奏功しなかったり、治療による悪化の可能性があります。診断の時、治療方針を決定する時、治療を見直す時などにお役にたてればと思います。

 

遠方の方、あるいは遠方でなくても時間がとれる方は短期間の入院をして診断、疾患評価、治療方針の決定の時間にしていただければと思っています。さらに、入院を疾患理解の時間にしていただければとも思います。入院中はできるだけ疾患のお話をさせていただきます。当院に通院しにくい患者さんにも地元の先生と一緒に安心した医療を患者さんに提供できればと思います。

 

京大から異動するにあたり、京都に患者さんを残していくことも心配でしたが、多くの患者さんを康生会武田病院で継続して診療させていただくことになりました。医師の異動で患者さんにはご迷惑をおかけして申し訳ないことです。

 

京都では民医連の田中先生がMSの専門家として有名です。京都府立医大の藤井先生も私たちと一緒に臨床や研究をしている優れた専門家です。京大には、まだ本格的に臨床の場に出ていませんが、神経免疫の臨床と研究をしている大学院生(端、岡田、濱谷)がいます。神経免疫の知識が豊富な力のある神経内科医です。

 

MSの専門加療を行なっている先生は他にもおられますが、私たちとは治療方針などに違いがある場合が多いようです。全体として考えても、京都の神経免疫の診療を行なっている医師はまだまだ少ないのが現状だと思います。

 

私自身は今後も京都の神経免疫診療にも貢献したいと思っています。武田病院では土曜日の診療を続けています。通常の初診患者さんは受け付けていませんが、神経免疫の患者さん、あるいはその可能性のある患者さんで希望のある方は武田病院も利用してください。

 

どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。

2016.10.4

この記事は少しめんどくさいかもしれないので、まずこの記事を通じて伝えたいことを書いてみます。

 

どの薬であっても、薬の効果だけではなくリスクを医師は伝える必要があります。父親主義的な患者さんに不安を生じさせないための配慮でも、リスクを伝えないのは今日的な価値観からは問題があります。

 

現在のMSの薬のどれであっても全ての患者さんに有効だということはありません。また全く有害事象のないものもありません。薬剤の正しい使用法を身につけていくためにも有害事象を医療者は共有する必要があります。そしてそれは患者さんの知る権利でもあります。

 

一般的にある薬Aとある事柄Bと関連があるというためには、Aを服用している人に起こったBの頻度と薬を服用していない人に起こった頻度を解析します。Aの服用時にBが起こった頻度とA非服用時の頻度の差が偶然によって起こりうるかどうかを数学的に計算し、偶然におこる確率が一定の確率より小さい時(例えば5%以下)、AとBは関連がある(統計的有意差)といえます。

 

通常、AとBが偶然におこる確率が5.1%以上あるという解析結果になると関連があるとはいえないことになります。この場合、もう少し大規模な解析にすれば相関が証明できることもあります。

 

さて、MRIで造影剤を使用する時の説明を思い出してください。30-100万人に1人死亡しているという説明を受けていると思います。このような頻度の少ない副作用は、統計的有意差を持って関連があると認定するのは困難です。造影剤を投与してからの時間関係、生物学的反応として矛盾をしていないことから強く疑い、同意書をとる必要まであるのです。めったにおこらないから患者さんに説明しないという価値観は今日的にはゆるされません。

 

新しく認可された薬では、起こった有害事象(薬物との因果関係を認定せずに薬物を投与された患者に生じた好ましくない、または意図しない徴候、症状)が報告された場合、それが深刻なものであれば製薬会社も添付文書に記載し、注意を喚起します。統計的有意差がないからといって相関関係を否定することもできないから当然のことです。

 

有害な事象が起こっても各医師の判断によっては報告されないことも多くあります。ある薬の使用時には、20年使用して起きていなかったはずの重篤な有害事象が実は複数例起こっていたことが20年経過して明らかになった薬もあります。

 

とはいえ、認可された薬は多くの厳しい臨床試験を経ています。現在認可されているMSの薬は、正しい使用法をすれば有害な反応(リスク)を起こすより患者さんにとって有益な反応(ベネフィット)を起こす可能性がはるかに高い薬ばかりです。

 

しかし、今日のMSの薬はどの薬も良い点と悪い点があります。有害な副作用(薬との因果関係のある事象)のない薬はありません。特に免疫を動かす薬であるMS再発予防の薬は感染リスクと発がんリスクを変える可能性があります。そういったリスクは長期間丁寧にフォローをする必要があります。今の時点でそういったリスクに関して一定の評価を与えることができるのはアボネックス、ベタフェロン、コパキソンだけです。

 

有害事情が起こった時に、薬との関与をすぐに否定するのは傲慢であると思います。起こっている重篤な有害事象を患者さんに伝えることもなく、患者さんから聴き取った有害事象を薬と関係のないと切り捨てることは今の医師の倫理観では認めがたいことだと思います。まして、統計的有意差はないからとの理由で臓器移植や死亡に至った状況を最初から関係ないと切り捨てて報告しないようなことは、将来私たちが正しい判断をする材料をみずから捨てることになります。

 

もちろん、造影剤による死亡例があってもほとんどの医療者は造影剤を使用する検査を患者さんに勧め、患者さんも受け入れます。今のMSの薬は正しく使用すれば、安全性の比較的高いものばかりであることは私もそう思います。

 

新しい薬で重篤な副作用を起こした症例では、今から振り返れば過剰なステロイドパルスの使用などがありました。残念ですが、そういった経験を経て、それを共有することによってだんだんと医療者も正しい使用法を認識しています。そして、判明している自分におこりうる重篤な有害事象に関しては患者さんの知る権利でもあります。

 

2016.3.7

おひさしぶりです。〆切の原稿、書類がたくさんあって間に合ってないのもたくさんあって、ここに記事を書くと〆切先にやれと言われそうな気がして更新が滞りがちでした。ごめんなさい。

 

ところでネット情報によりますと、MSに日光は悪いのですよ、という情報を散見します。この一部は陽に当たると体温が上昇して調子が悪くなるということを基礎にしているのかもしれません。

 

でも、日光にあたると免疫低下するとか免疫のバランスがおかしくなるとかは間違ってますから信じないでください。

 

日光にあたるほどMSは軽症化する、子供の頃の日光の照射低下が発症に関係すると言われています。北海道や緯度が高いほどMSが多いのも日照時間と関係すると言われています。

 

日光にあたるとビタミンDが増えます。ビタミンDは免疫修飾作用があるんです。だから、北欧はMSが非常に多いのですが、ビタミンDが含まれる鮭を食べるノルウェーは意外に少ないです。

 

でも中田理事長からは北海道で鮭食べてても多いのはなぜよと詰問されてしまいました。うーーん。

 

もちろん、日焼けしてヒリヒリして火傷になるような状況がいいかどうかは別問題かとは思っています。また陽にあたり身体が温まり、調子が悪くなることはありえるので患者さんによっては注意が必要です。でも、結局陽にあたる方がMSの進行が抑えられるというのも本当です。

 

ネットに書きながら言うのもブーメランですが、どんな偉い先生のサイトでも、どんな権威のある会社の書いたことでも、あれ、っと思うことがあるものです。

2015.12.17

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