治療薬Q&A~ナタリズマブ・タイサブリ|MSキャビン(多発性硬化症 視神経脊髄炎)

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トップページ > 治療薬Q&A~ナタリズマブ・タイサブリ

ナタリズマブ・タイサブリ

avxナタリズマブ(タイサブリ®)は日本で2014年に発売されました。4週間に1回、点滴で投与します。

 

このページでは、この薬についてQ&Aで解説しています。

新規公開:2016年5月27日  更新:2018年12月14日

文:MSキャビン編集委員
大橋高志おおはしたかし越智博文おちひろふみ近藤誉之こんどうたかゆき中島一郎なかしまいちろう
新野正明にいのまさあき宮本勝一みやもとかついち横山和正よこやまかずまさ中田郷子なかたきょうこ

全体的なことを教えてください。
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タイサブリ®とは何ですか?全体的なことを教えてください。

タイサブリ®は、再発寛解型MSに対する点滴の再発予防薬です。

 

MSは免疫系に何らかの異常が起こり、中枢神経系(脳、脊髄せきずい、視神経)の軸索じくさくを覆っているミエリンを外敵と見なして攻撃してしまうことによって起こります(→「MSのあらまし -病気の起こり方」へ)。

 

免疫細胞のひとつであるリンパ球の表面には「インテグリン」というタンパクが存在しています。ナタリズマブは、このインテグリンをブロックすることで、リンパ球が中枢神経系に入るのを阻止します。

 

どのように使いますか?全体的なことを教えてください。

タイサブリ®は点滴薬で4週に1回、医療施設で治療を受けます。点滴自体の時間は1時間ほどで、外来でできます。

 

どのような効果があるのですか?全体的なことを教えてください。

タイサブリ®は年間の再発率を約70%減らすというデータが得られています。インターフェロン・ベータ(ベタフェロン®、アボネックス®)とグラチラマー酢酸塩さくさんえん(コパキソン®)は約30%、フマル酸ジメチル(テクフィデラ®)とフィンゴリモド(イムセラ®、ジレニア®)は約50%であることを考えると、その効果は絶大です。

 

MSが完治しますか?全体的なことを教えてください。

タイサブリ®を点滴してもMSは完治しません。現在、MSを完治させる薬は存在しません。

 

どのような人に効くのですか?
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どのような人に良い薬ですか?どのような人に効くのですか?

タイサブリ®の効能は「多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」ですが、少なくとも、こうJCじぇいしーウイルス抗体こうたいが陽性の人には第1選択薬とはならないと考えられます。

 

しかし進行性しんこうせい多巣性たそうせい白質はくしつ脳症のうしょうPMLぴーえむえる)のリスクよりもMSの障害進行のほうが問題だと考えられる場合は使用を考慮しても良く、病状や抗JCウイルス抗体の有無により、個別にタイサブリ®の使用を考えていくことになります。

 

PMLと抗JCウイルス抗体については、副作用の項目をご覧ください。

 

進行型のMSにも効きますか?どのような人に効くのですか?

タイサブリ®は海外でも再発寛解型MSに対して使われており、進行型MSに対する安全性と効果は不明です。二次性進行型MSに対する海外の治験では、上肢機能に効果がみられたものの、有効性は証明できませんでした。一次性進行型MSに対する治験はおこなわれていません。


小児MSにも効きますか?どのような人に効くのですか?

小児への安全性・効果は不明です。添付文書には「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない」と記載されています。


再発が続きますが、効いてないのですか?どのような人に効くのですか?

タイサブリ®は4週間以内に効果が出始めるといわれています。治療開始後すぐに再発した場合はまだ効果が出ていないのかもしれず、すぐに「効いていない」とは判断できません。

 

しかし、再発が続く場合や、これまでに経験したことがないような大きな再発をした場合はタイサブリ®が合っていないのかもしれず、治療の見直しが必要になってきます。

 

別のDMDからタイサブリ®に変更した時にこのようなことが起こった場合には、それまで使っていたDMDの効果が切れたことによる再発、あるいは急激に病気が悪化する「リバウンド」の可能性もあります。

 

リバウンドはフマル酸ジメチル(テクフィデラ®)とフィンゴリモド(イムセラ®、ジレニア®)にも報告されています。

 

かえって悪化しませんか?どのような人に効くのですか?

タイサブリ®は再発寛解型MSの人に使われますが、全ての人に効果があるわけではありません。再発が続く場合や、これまでに経験したことがないような大きな再発をした場合はタイサブリ®が合っていないのかもしれず、治療や診断の見直しが必要になってきます。


副作用について教えてください。
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どんな副作用がありますか?副作用について教えてください。

進行性しんこうせい多巣性たそうせい白質はくしつ脳症のうしょうPMLぴーえむえる)、小脳しょうのう顆粒かりゅう細胞障害さいぼうしょうがいGCNじーしーえぬ)、ヘルペス脳炎、そのほかの感染症、注射時反応(頭痛、嘔気おうき、発熱、疲労、じんましん、かゆみなど)、過敏症、肝障害、急性きゅうせい網膜壊死もうまくえしARNえーあーるえぬ)などが報告されています。

 

注射時反応は投与開始2時間以内に起こることがほとんどですが、数日経ってから起こることもあるので注意が必要です。過敏症は2回目の投与時に起こることが多いです。

 

タイサブリ®は副作用はさほど多くない薬剤ですが、長期使用により特に懸念されるのはPMLです。

 

PMLとは何ですか?副作用について教えてください。

PMLぴーえむえる進行性しんこうせい多巣性たそうせい白質はくしつ脳症のうしょう)は「JCじぇいしーウイルス」によって起こる病気です。JCウイルスには多くの人が知らないうちに感染しており、日本人MSでも約70%が感染しているといわれています。JCウイルスに感染していると、血液中でJCウイルスに対する「こうJCウイルス抗体こうたい」ができています。

 

通常であればJCウイルスを持っていてもPMLを発症しませんが、免疫が抑えられた状態になると発症することがあります。PMLは初期のうちは症状を出さないことが多いですが、一度症状が出ると週単位で進行していくことが特徴です。PMLは死亡または重い後遺症を残す恐れがある病気で、確立した治療法はありません。

 

このPMLが、タイサブリ®の治療中に発症することが報告されています。報告は海外からが多いですが、国内からもあります。

 

タイサブリ®治療中にPMLを発症するリスクが高い因子として「抗JCウイルス抗体陽性」「ステロイド薬を除く免疫抑制薬の治療経験がある」「2年以上タイサブリ®で治療している」が挙げられています。

 

これらの因子を全て満たす人、また「免疫抑制薬の治療経験がなくても抗JCウイルス抗体価が高くてタイサブリ®治療歴が長い場合」もPML発症リスクが高くなります。

 

PMLに関して注意すべきことは何ですか?副作用について教えてください。

抗JCウイルス抗体陰性の場合は、その時点ではあまりPMLのリスクを考えないで使用できます。しかし陰性でも年間約10〜15%が後に陽性に変わっています。従って半年毎に抗JCウイルス抗体を測定する必要があります。

 

発症初期のPMLを見つけるためには定期的な脳MRI検査が重要です。抗JCウイルス抗体が陰性であっても1年に1回、陽性の場合は3〜4ヶ月に1回程度の頻繁な脳MRI検査が必要です。また何か異変を感じたら主治医に連絡してください。

 

PMLになると、どのような症状が出ますか?副作用について教えてください。

PMLの症状は、MSの再発に似ていることがあります。ただPMLは、MSの再発よりもゆっくりと週単位で進行していくことが特徴です。

 

特に、精神状態・行動の変化、記憶障害、体の片側の麻痺、視力障害、失語症しつごしょうなどの症状に注意してください。

 

ほかにも何か変化を感じたら早めに主治医に伝えてください。

 

抗JCウイルス抗体陽性だと使えないのですか?副作用について教えてください。

陽性の人に禁止はされてはいません。しかし抗JCウイルスの抗体価が高いほど、また治療期間が長いほど、PMLの発症リスクが高くなります

 

長期では使えないのですか?副作用について教えてください。

抗JCウイルス抗体陰性の状態を持続している場合はPML発症の可能性は低く、治療継続は可能です。しかし抗JCウイルス抗体が陽性の場合、2年以上の使用は慎重にすべきだと考えられます。

 

GCNとは何ですか?副作用について教えてください。

GCNじーしーえぬ小脳しょうのう顆粒かりゅう細胞さいぼう障害しょうがい)とは小脳の病気です。海外からタイサブリ®の使用中にGCNを発症したという報告がありました。

 

タイサブリ®の使用中に、眼振がんしん(意思とは関係なく眼球が小刻みに揺れる)、ふらつき、ふるえ、話しにくいなどの小脳症状が出てきた場合は、すぐに主治医に連絡してください。

 

報告されたGCNはJCウイルスによるものです。

 

急性網膜壊死とは何ですか?副作用について教えてください。

急性きゅうせい網膜もうまく壊死えしとは、水痘すいとう帯状疱疹たいじょうほうしんウイルス、単純ヘルペスウイルスなどによって起こる目の病気です。放置すると失明に至る可能性があります。

 

これらのウイルスには多くの成人が感染していて、体内に潜伏させた状態にあります。ほとんどの人は問題ありませんが、免疫が抑制された状態・バランスが崩れた状態になると病気を起こすことがあります。急性網膜壊死もそのひとつです。

 

急性網膜壊死は突然の眼痛と視力低下で始まり、症状は急速に進みます。多くは片目に発症しますが両目に起こることもあります。

 

海外から、タイサブリ®使用中に急性網膜壊死を発症したという報告があります。タイサブリ使用中に目の症状が現れた時は、すぐに主治医に連絡してください。

 

素朴な疑問です。
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始める時は入院するのですか?素朴な疑問です。

基本的には入院は必要ありませんが、施設によっては、特に初回は点滴後の経過をみるために入院しておこなう場合もあります。

 

点滴は1時間ほどですが、じんましんや息苦しさ、血圧の低下など過敏症と呼ばれるアレルギー症状が出ることがあります。また人によっては疲労を感じることもあります。そのため点滴後1時間は院内で様子をみることがすすめられています。

 

医療費はどうなりますか?素朴な疑問です。

タイサブリ®は1回の点滴が227,831円です。しかしMSの再発予防薬として承認されているため、指定難病の条件を満たせば医療費助成が受けられます。詳しくは「医療費助成について」をご覧ください。

 

他の治療・予防接種について
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併用してはいけない薬は?他の治療・予防接種について

タイサブリ®はほかのMSの再発予防薬、また免疫抑制薬とは併用できません。

 

市販薬、サプリメントについては併用禁止にはなっていませんが、安全だという保障もありません。主治医とご相談ください。

 

インフルエンザの予防接種は受けられますか?他の治療・予防接種について

インフルエンザワクチンなどの不活化ふかつかワクチンは併用禁止にはなっていません。しかしタイサブリ®治療中は、接種しても効果が不充分だという可能性が指摘されています。

 

ステロイドパルス療法は受けられますか?他の治療・予防接種について

タイサブリ®使用中のステロイドパルス療法は禁止されていません。再発と考えられる場合には、PMLなどほかの脳の病気との鑑別を慎重にしたうえで、ステロイドパルスをおこなうことがあります。

 

効いているのでしょうか?
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最近、再発するようになった気がします。効いているのでしょうか?

体内で、タイサブリ®に対する「こうナタリズマブ抗体こうたい」が作られている可能性があります。抗体を測定してもらうこともできますが、抗体の有無に関わらず、事実として再発を起こすようになっているのなら、治療薬の変更が必要です。

 

子どもがほしいのですが?
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妊娠・出産に影響ありますか?子どもがほしいのですが?

タイサブリ®を使用した355人の妊婦を対象にした海外の調査結果があります。それによると、薬によると思われる奇形の発生はなく、また流産の発生率は一般の人と同じでした。

 

日本の添付文書では「治療しないことによるリスクのほうが大きいのであれば、妊娠中の使用はやむを得ない」といったことが書かれています。妊娠希望の方にタイサブリ®を使用すべきかどうかは個別に判断することになります。

 

出産後、いつ再開したら良いでしょうか?子どもがほしいのですが?

一般的には出産後にMSの再発率が上昇するので、早めの治療再開がすすめられています。初乳が済んだ時点で治療を再開するのが望ましいとされることもありますが、お母さんやご家族の気持ちもあります。妊娠前・その時点での病状も含めて、主治医とご相談ください。


授乳と薬剤の関係について教えてください。子どもがほしいのですが?

薬剤が母乳を介して乳児に移行する可能性があるので、授乳中はタイサブリ®を使えません。


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