ベタフェロン®(一般名:インターフェロン・ベータ1b)は、多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬(DMD)のひとつです。2日に1回、皮下注射で投与します。
再発寛解型MSの治療に用いられる薬の中では、効果が低いグループに分類されます。
日本では2000年11月に承認されました。
ベタフェロン® – 基本情報
| 一般名(商品名) | ベタフェロン®(インターフェロン・ベータ1b) |
| 投与方法(頻度) | 皮下注射(2日に1回) |
| 効能または効果 | 多発性硬化症の再発予防及び進行抑制 |
| 薬価 | 6,901円(2025年10月現在) |
| 再発寛解型MSへの効果 | 低い |
ベタフェロン® – よくあるQ&A
ベタフェロン® – 詳細
主な作用・効果・投与方法・医療費
ベタフェロン®(インターフェロン・ベータ1a)は、人間の体内で分泌されているタンパク質「インターフェロン・ベータ」を、遺伝子組み換え技術を用いて薬にしたものです。
ベタフェロン®による治療は、アボネックス®とコパキソン®とまとめて「ABC療法」と呼ばれることがあります。
国内外の臨床試験では、MSの再発回数を減らし、再発した時の症状を軽くする効果が示されています。またMRI検査で確認できる病巣の拡大や新しい病巣の出現を減らす作用もあります。
海外の臨床試験ではMSの障害度の進行を抑制したことが報告されていて、日本におけるベタフェロン®の効能は「MSの再発予防及び進行抑制」となっています。
ただ、実際には進行している人に対してはベタフェロン®よりも有効性が高い薬が使われることがほとんどです。
ベタフェロン®は2日に1回の皮下注射薬です。本人または家族などが、お腹、太もも、腕、お尻などの柔らかい部位に注射します。病院で指導を受ければ、自宅で自己注射ができます。
針は30ゲージというサイズでとても細く、注射の深さは、筋肉に到達しない皮下の部分です。
ベタフェロン®の年間薬剤費は2025年10月現在、約126万円です。しかしMSの治療薬として承認されているため、指定難病の条件を満たせば医療費助成が受けられます。詳しくは「医療費助成」をご覧ください。
主な作用・投与方法・効果・医療費
- インフルエンザ様症状:
発熱、頭痛、倦怠感、関節痛、悪寒などの「インフルエンザ様症状」です。治療を始めたばかりの頃によく出ます。
これに対しては、少ない量から始めて徐々に増やしていく「漸増法」が行われます。こうすることでベタフェロン®が無理なく体に慣れていくことが多いです。
また注射の前後に解熱鎮痛剤を服用します。解熱鎮痛剤は服用のタイミングが重要なので、いつ飲めば良いか主治医とご相談ください。
インフルエンザ様症状の多くは、時間の経過時間の経過と共になくなっていきますが、症状が軽減しない場合は、別の薬への変更が検討されます。 - 注射部位反応:
注射をした部位が赤くなったり痛くなったりすることがあります。
これを避けるためには注射手技を再確認し、注射部位のローテーションを確実にするなどしてください。 - リンパ球数の減少・肝機能障害:
自覚しにくい副作用なので、定期的に血液検査をしてもらってください。 - 抑うつ状態:
気分の変調がある場合は、早めに主治医に伝えてください。
投与を忘れた場合・保存方法・持ち運び
ベタフェロン®の自己注射を忘れた場合、気付いた時点ですぐに打ちます。その後はその日を起点に2日に1回、注射します。
ベタフェロン®は室温で保存できます。
しかし30度以上あるいは氷点下になると薬剤が変性する可能性があるため、真夏で室内が30度を超えるようであれば冷蔵庫に保管します。
一方、寒い地域では凍結しないよう、冬場は冷蔵庫に入れた方が良いこともあります。
冷蔵庫に入れた場合は、必ず常温に戻してから注射してください。注射部位反応が強く出る恐れがあります。
ベタフェロン®は空港のX線検査を通過できますが、手荷物で機内に持ち込むのが安心です。
飛行機は原則「注射針は、機内で使用することがなければ持ち込み禁止」とされています。しかし現状として国内の場合、手荷物検査の際に針を持参していることを伝えれば、問題ないようです。 航空会社(日本航空・全日空)では、注射器を機内に持ち込む場合は、予約の時点で伝えておくことを勧めています。
海外旅行に行く際は、英文の診断書と薬剤証明書を携帯することをお勧めします。早めに主治医に相談してください。
他の治療薬・ワクチン接種
ベタフェロン®は漢方薬の小柴胡湯とは併用できません。機序は分かりませんが、間質性肺炎を起こす可能性があります。また、他のMS疾患修飾薬とは併用できません。
また、ステロイド薬とベタフェロン®の併用は禁止されていません。実際には、ステロイドパルス中はベタフェロン®を休む人、ステロイドパルス中もベタフェロン®を継続する人と、どちらもいます。決まりはありません。
ベタフェロン®の治療中でもワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。ワクチンの副反応で具合が悪い場合は、ベタフェロン®の注射日をずらしても構いません。
効果判定と生活への影響
ベタフェロン®は効果が出るまでに数カ月かかるといわれています。治療開始後すぐに再発した場合はまだ効果が出ていないのかもしれず、すぐに「効いていない」とは判断できません。
しかし、再発が続く場合や、これまでに経験したことがないような大きな再発をした場合はベタフェロン®が合っていないのかもしれず、治療や診断の見直しが必要になってきます。
別のDMDからベタフェロン®に変更した時にこのようなことが起こった場合には、それまで使っていた薬の効果が切れたことによる再発、あるいは急激に病気が悪化する前薬の「リバウンド」の可能性もあります。
使用期間は決められていません。ベタフェロン®は再発を予防する薬です。この薬を始めて病状が安定し、副作用に問題がなければ、続けた方がいいといえます。
妊娠・出産・授乳への影響
海外の臨床試験で安全性が確認されています。ベタフェロン®は妊娠中も継続可能です。
添付文書には「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と書かれています。ベタフェロン®治療中の授乳は可能です。
関連動画



- 大橋高志(脳神経内科医・鎌ケ谷総合病院)
- 越智博文(脳神経内科医・愛媛大学大学院)
- 近藤誉之(脳神経内科医・関西医科大学総合医療センター)
- 中島一郎(脳神経内科医・東北医科薬科大学)
- 新野正明(脳神経内科医・北海道医療センター)
- 宮本勝一(脳神経内科医・和歌山県立医科大学)
- 横山和正(脳神経内科医・東静脳神経センター)
- 2025年11月9日(基本情報を追加)
- 2024年9月2日(医療費を追加)
- 2024年3月11日(全体を改訂)
- 2022年4月27日(全体を改訂)
- 2001年5月(新規公開)
監修:MSキャビン編集委員
出典:MSキャビン「MS治療薬解説:ベタフェロン」
URL:https://www.mscabin.org/ms/msbetaferon/
(最終更新日:2025年11月9日)






