多発性硬化症(MS)

症状

症状は人によって違う

MSの症状は通常、病巣ができる部分に応じて出てきます。病巣ができる部位や大きさは人それぞれで違うので、症状の出方は人によって様々です。非常に個人差があり、1人のMSの人と別のMSの人を比べてみた時、同じ病気の患者さんとは思えないことがあります。

さらに1人の患者さんでも、症状は季節や体調の影響でよく変わります。日によって、また1日の中でも時間によって変わることもあります。「昨日は元気そうだったのに今日は具合が悪そう」といったこともよくあります。この「症状の変動」は「再発」との区別が時に難しく、多くの患者さんを悩ませています。

病巣と症状は必ず一致するとは限らない

症状の多くは病巣ができる部位に応じて出てきますが、MRIで認められる病巣と症状は必ず一致するとは限りません。症状が出ていなくてもMRI検査をすると病巣が写ることもあります。このような症状を出さない病巣のことを「無症候性病巣(むしょうこうせいびょうそう)」といいます。MSでよく認められます。

多発性硬化症の症状

MS全体として見られる症状は次の通りです。いろいろな症状がありますが、1人の患者さんが全てを経験するわけではないこと、そして、ここに解説していない症状もあることにご留意ください。

視神経の症状

視神経に炎症が起こる状態を「視神経炎」といいます。MSの視神経炎では視力低下、視野欠損、色覚異常、眼痛などの症状が出てきます。多くは数日のうちにピークを迎えることが多いですが、時に数週間から数カ月かけて悪化することもあります。片目に起こることが多く、両目同時に起こることは少ないです。「見えにくい」といった状態がほとんどで、失明はまず起こりません。

脳幹・ 小脳の症状

物が二重に見える(複視)、意思とは関係なく眼球が小刻みに揺れる(眼振)、ろれつが回らない、真っすぐ歩けない、酔った人のようにふらふら歩く、動作する時に手足が震える、物が飲み込みにくい、顔面の痛み(三叉神経痛)、などの症状が出ることがあります。

脊髄の症状

運動障害、つっぱり(痙性)、痛み・しびれ、皮膚の感覚が鈍くなる、温かさや冷たさを感じにくくなる、かゆみ、排尿・排便障害、性機能障害が起こることがあります。

レルミット徴候

首を前に曲げると、背筋から足にかけてビリビリ感やヒリヒリ感が走る「レルミット徴候」が起こることもあります。持続時間は1〜2秒程度で、手や腕にもしびれが走ることもあります。

動作をきっかけに、意思とは関係なく痛みを伴う激しいつっぱりが手足や腹筋に起こることがあり、これを「有痛性強直性痙攣(ゆうつうせいきょうちょくせいけいれん)」といいます。

大脳の症状

同時に多くの課題をこなせない、物事を成し遂げるのに時間がかかる、注意力を保つのが難しい、集中するのが難しい、記憶力の低下などの「認知機能障害(高次脳機能障害)」が出ることがあります。

認知機能障害と聞くと「アルツハイマー型認知症」をイメージするかもしれませんが、MSでは通常、日常生活が遅れなくなるほどの支障を来すほどのものではなく、多くは「何となくおかしい」といった具合です。

感情のコントロールが難しくなる情動障害や、抑うつが起こることもあります。

疲 労

疲労はMSでとても多い症状です。人それぞれで程度は大きく違い、1人の患者さんでも、日・時間によって変化することがあります。外見からは分からないため理解されにくい症状の1つで、日常生活にかなりの支障を来している人もいます。

MSの疲労は大きく次の4つに分けられます。これらが組み合わさって起こることが多いです。

1)通常の疲労
MSではない人も経験する一般的な疲労です。

2)症状に起因する疲労
例えば、身体障害があって動作が難しい場合は、目的を達成するのに通常よりも多くの努力が必要になります。夜中に何度もトイレに起きる頻尿は睡眠不足となります。そういったMSの症状に起因する疲労です。

3)薬物による疲労
ステロイド薬やインターフェロン・ベータ、抗けいれん薬、抗うつ薬などは、その副作用として疲労が起こることがあります。

4)病気自体による疲労
気温や運動量、ストレスの有無などに関わらず、どうしようもない倦怠感を経験することがあります。この倦怠感を経験した人は「普通の疲労とまるで違う」「急に電池が切れたみたい」「病気になる前は経験しなかった」などと表現します。突然起こることもあり、そのメカニズムははっきりしていません。

その他

体温が上がるとMSの神経症状が一時的に悪化することがあります。これを「ウートフ現象」といいます。体温が下がれば症状は回復します。ウートフ現象の有無と程度は人それぞれです。

また、性機能が障害されることがあります。MSが直接の原因で妊娠できなくなることはありません。

MSではない人と比べてMSの人は、片頭痛や緊張型頭痛が多いという報告があります。何か共通の環境因子や遺伝的背景があるのでは、と考えられています。
(2023/10/18更新)