MOG抗体関連疾患(MOGAD)

検査と診断

MOG抗体の有無を調べる検査

MOGADは、MOG抗体がミエリンを攻撃することによって起こる病気です。従ってMOGADの診断では、MOG抗体が陽性かどうかを確認する必要があります。

通常は血液を調べますが、髄液を調べることもあります。MOG抗体が髄液でのみ認められることもあるからです。大事な検査ですが保険は適用されていません。

病巣の大きさや分布がわかるMRI検査

MRI検査は強い磁気と電波を使って体の断面像を写し出す検査です。これによりMOGADの病巣を確認できます。

MOGADでは主に「T1強調画像」「T2強調画像」「FLAIR画像」という方法で撮られ、T1強調画像では病巣は黒く、T2強調画像とFLAIR画像では白く写ります。脊髄は「T2強調画像」「プロトン密度強調像」または「STIR画像」、視神経は「脂肪抑制T2強調画像」または「STIR画像」という方法で撮られます。

MRI検査では、「ガドリニウム」という造影剤を使うことがあります。これは、病巣が最近生じて活動しているものなのか、過去の名残なのかを調べるためです。活動中の病巣はガドリニウムを使うとT1強調画像で白く染まって写ることがあります。

MOGADでは脊髄MRIで、脊椎の3椎体以上に渡る縦に長い病巣が見られること、また輪切りにした脊髄MRIで中心の灰白質という部分に大きな病巣ができることがあります。

脳MRIに病巣が認められることもあり、腫れを伴って大きなものからポツポツ小さなものまで様々です。病巣が認められるのに症状には現れない「無症候性病巣」が認められることもあります。

視神経の具合を調べる眼科検査

MOGADは目に症状が出ることが多い病気です。次の検査は主に眼科で行われます。

中心フリッカー値(CFF)測定検査
筒をのぞき込んで光の点滅を見ます。検査では点滅の速度が変えられていき、それが分からなくなる時点と、分かり始める時点が調べられます。正常値は35〜45Hzで、視神経に異常があると、その値が低くなります。

視野検査
視野の範囲を調べる検査です。機器に顎を乗せて中心にある印を見つめ、周りに点滅する光が見える範囲が調べられます。

光干渉断層計(OCT)検査
近赤外線を利用して網膜の厚さを測定することで、視神経の状態がどうなっているかを詳しく調べる検査です。

脳脊髄内の状態がわかる髄液検査

脳と脊髄の周りは「脳脊髄液(髄液)」で満たされています。この髄液の状態を調べるのが髄液検査です。髄液は、腰椎穿刺(ルンバール)という方法で、背中から背骨の間に針を刺して抜き取ります。針を刺す間はじっとしている必要があり、終わった後も1時間程度の安静が必要です。

MOGADでは通常、髄液に次のような所見がみられます。ただ、全てのMOGADがこのような結果を示すとは限りません。

脳脊髄圧ほぼ正常(70〜180mm水柱)
外観無色透明
細胞数増加することが多い。多形核球が増加することがある
総タンパク急性増悪期で上昇することが多い
IgGインデックス上昇することは少ない
オリゴクローナルバンド10〜20%で陽性

神経の伝わり具合が分かる誘発電位検査

誘発電位検査では体に刺激を与え、その刺激が脳に達するまでの速さと強さを調べます。伝わり方に異常があれば、その刺激の通り道に障害があると考えられます。診察室で行う神経診察では全て正常でも、この検査で異常が検出されることがあります。

誘発電位検査には、次の4種類があります。

視覚誘発電位(VEP)
視神経を調べる検査です。白黒が反転するテレビ画面、または点滅する光を見つめます。

聴性脳幹誘発電位(BAEP)
脳幹を調べる検査です。ヘッドホンを付けて「カチカチ」というかすかな鋭い音を聞き、その刺激が耳から脳に伝わるまでの時間が測定されます。

体性感覚誘発電位(SEP)
脊髄と脳幹を調べる検査です。左右の手首と足首に軽い電気刺激を受け、その刺激が脳までどのように伝わるのかが調べられます。

運動誘発電位(MEP)
脳や脊髄に磁気刺激を加えて、運動神経の機能を調べる検査です。SEPが感覚神経の通り道を調べるのに対して、MEPは運動神経の通り道の異常を調べます。あまり行われません。

MOGADの診断基準はまだない

2020年にMOGADの診断基準を作成するための国際委員会が立ち上がっています。現在のところ、診断基準はまだ完成していません。実際にはMOG抗体の有無と検査所見、臨床症状から診断されています。小児ではADEM(急性散在性脳脊髄炎)と診断されていることが多いです。

専門分野は「神経免疫」

診療科でいうとMOGADは「脳神経内科(神経内科)」が通常担当します。脳神経内科の中にも認知症や脳血管障害などいくつかの専門分野がありますが、MOGADは「神経免疫」を専門にする医師が担当することが多いです。小児の場合は小児神経科が担当することが多いです。