多発性硬化症(MS)

経過

再発と寛解

MSの再発とは「新しい症状が出るか、もともとあった症状が悪化して24時間以上続き、発熱や感染がなく、MSに典型的な診察所見がある状態」と理解されています。

発症・再発時はミエリンが壊れて症状が強く出ており、この時期を「急性増悪期(きゅうせいぞうあくき)」と呼びます。それに対して、明らかな症状も出現しておらず、症状の進行もなく、安定しているように見える時期を「寛解期(かんかいき)」といいます。

進行

MSの進行は、再発がないのに症状が重くなっていく状態をいいます。数カ月〜年単位で日常生活が不自由になっていきます。大抵はとてもゆっくり進むので、自分で気付くのは難しいことが多いです。

MSの自然経過

治療しない場合の経過を「自然経過」といいます。MSの自然経過を下に示しました。多くは再発と寛解を繰り返し、その後、症状が徐々に悪化する進行期に入ります。

この経過の速さは人によって違います。進行期に入らないうちに天寿を全うする人もいれば、早いうちに進行期に入る人もいます。

このような経過を改善することを期待して、MSでは、再発予防・進行抑制の薬を使って治療をします。実際、薬が数多く使えるようになった今では進行期に入るまでの期間が長くなり、MSの経過は以前より良くなってきています。

経過による分類

◉clinically isolated syndrome(CIS)
最初に症状が出た段階を「CIS(しーあいえす)」といいます。今後MSになる確率が高い状態です。

◉再発寛解型MS(RRMS)
再発と寛解が現れる時期のMSを「再発寛解型MS」と呼びます。MS患者さんの多くがこの状態です。再発の頻度は個々人で違います。症状の重さや回復具合も再発ごとに異なります。

◉二次性進行型MS(SPMS)
再発寛解期ののち、徐々に症状が悪化して日常生活が不自由になっているMSを「二次性進行型MS」と呼びます。RRMSからSPMSへの移行は、ある時ガラッと変わるのではなく、その変化はご本人にも主治医にも分からないほどゆっくりです。

◉一次性進行型MS(PPMS)
発症した時から症状が継続的に悪化しているタイプを「一次性進行型MS(PPMS)」といいます。日本人ではMS全体の数パーセント程度だといわれています。
(2023/11/28更新)