症状は人によって違い、1人の患者さんでもよく変動

NMOSDの症状は通常、病巣ができる部分に応じて出てきます。病巣ができる部位や大きさは人それぞれで違うので、症状の出方は人によって様々です。非常に個人差があり、1人のNMOSDの人と別のNMOSDの人を比べてみた時、同じ病気の患者さんとは思えないことがあります。
さらに1人の患者さんでも、症状は季節や体調の影響でよく変わります。日によって変わることもあります。「昨日は元気そうだったのに、今日は具合が悪そう」といったこともよくあります。
NMOSD全体としてみられる症状
NMOSD全体としてみられる症状は次のとおりです。いろいろな症状がありますが、1人の患者さんが全てを経験するわけではないこと、そして、ここに解説していない症状もあることをご留意ください。
視神経の症状

「ぼやける」「何となく暗い」「視野が欠ける」「色が分かりにくい」「まぶしい」など。目の中や目の奥、目の周辺が痛くなることもあります。特に目を動かした時に目の奥が痛くなることが多いです。片目にも両目にも起こる可能性があり、予防治療をしていない場合は重症になることが多いです。
脊髄の症状
「力が入らない」「歩けない」「立てない」「起き上がれない」など。予防治療をしていない場合は重症になることが多いです。

「しびれる」「ビリビリ痛い」などの感覚障害が出ることもあります。温覚、冷覚、痛覚などが分かりにくくなったり、全ての感覚がにぶくなったりすることもあります。
脊髄の病巣部位に一致して、体幹を帯できつく締められているような痛みが出ることもあり、これを「帯状絞扼感(たいじょうこうやくかん)」といいます。また動作をきっかけに、意思とは関係なく痛みを伴って激しいつっぱりが起こることがあり、これを「有痛性強直性痙攣(ゆうつうせいきょうちょくせいけいれん)」といいます。
痛みはNMOSDでよく起こります。必ずしも病巣部位に一致しない耐え難い痛みが起こることもあります。これは精神的な問題ではなく、最近は痛みに対する脳の認知の障害だと考えられています。
その他、首を前に曲げると、腰から足にかけてしびれが走る「レルミット徴候」が出ることもあります。
「トイレの回数が多い」「急にトイレに行きたくなる」「尿が出にくい」「漏らしてしまう」「尿を出し切った感じがしない」などの排尿障害や、便秘・便失禁などの排便障害が起こることもあります。
脳幹の症状
数日〜数週間持続して止まらないしゃっくり、吐き気、嘔吐(吐いてしまうこと)、物が飲み込みにくくなる嚥下障害、呼吸不全、物が二重に見える複視など。
視床下部の症状
のどの強い渇きや多尿を来す尿崩症、充分な睡眠にも関わらず日中に強烈な眠気を発作性に起こす過眠症(ナルコレプシー)、意識障害など。
大脳の症状
NMOSDでは大脳に病巣ができることもあります。症状は出ないもののMRIで病巣が写る「無症候性病巣」も含めると、NMOSDの50〜70%に大脳病巣があるといわれています。主な症状は意識障害・けいれん、体の縦半分だけ麻痺する片麻痺、両目の同じ側の視野が欠ける同名半盲などです。
疲 労

「歩き始めは好調だったのにすぐに足が重くなる」「長時間文字を書き続けられない」など。同じ動作を繰り返すとその部分が疲れてきて上手く動かせなくなってきます。
また、気温や運動量、ストレスの有無などにかかわらず「急にエネルギーが切れて動けなくなる」と表現されるような、どうしようもない全身倦怠感を経験することもあります。
その他

体温が上がると視力低下やしびれなどの感覚障害、脱力、倦怠感などの症状が一時的に悪化することがあります。これは「ウートフ現象」と呼ばれ、体温が下がれば症状は回復します。ウートフ現象の有無と程度は人それぞれです。 NMOSDでこのような現象があれば、それはウートフ現象かもしれません。
また、性機能が障害されることがあります。NMOSDが直接の原因で妊娠できなくなることはありません。