多発性硬化症(MS)

コパキソン®

コパキソン®(一般名:グラチラマー酢酸塩)は、多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬(DMD)のひとつです。1日に1回、皮下注射で投与します。
再発寛解型MSの治療に用いられる薬の中では、効果が低いグループに分類されます。
日本では2015年9月に承認されました。

コパキソン® – 基本情報

一般名(商品名)コパキソン®(グラチラマー酢酸塩)
投与方法(頻度)皮下注射(1日1回)
効能または効果多発性硬化症の再発予防
薬価5,603円/シリンジ(2025年10月現在)
再発寛解型MSへの効果低い

コパキソン® – よくあるQ&A

どのような効果がありますか?
  • MSの再発回数を減らし、再発した時の症状を軽くする効果が報告されています。
  • MRI検査で確認できる病巣の拡大や、新しい病巣の出現を減らす作用があります。
どのような副作用がありますか?
  • 注射部位反応:注射した部分の発赤、痛み、かゆみなどが見られることがあります。
  • 注射直後反応:注射後数分以内に、顔の紅潮、胸の痛み、息苦しさ、動悸・頻脈などが起こることがあります。
  • 過敏性反応:発赤、じんましん、喉のかゆみ、けいれん、失神などが現れることがあります。
どのように使うのですか?
  • 1日1回、本人または家族などが、皮下に注射します。
  • 専用の補助器具を使います。

コパキソン® – 詳細

MSは脳、脊髄、視神経の軸索を覆うミエリンが攻撃されてしまう病気です。そのミエリンはいくつかの成分で構成されています。

中でも「ミエリン塩基性タンパク」に注目して開発が始まったのがコパキソン®です。ミエリン塩基性タンパクの4つの成分を元にして人工的に作った製剤です。

コパキソン®による治療は、アボネックス®とベタフェロン®とまとめて「ABC療法」と呼ばれることがあります。

国内外の臨床試験では、MSの再発回数を減らしたり、再発した時の症状を軽くしたりする効果が示されています。またMRI検査で確認できる病巣の拡大新しい病巣の出現を減らす作用もあります。

一方で進行抑制に対するデータはほとんどありません。日本におけるコパキソン®の効能は「多発性硬化症の再発予防」です。

コパキソン®は1日1回皮下注射薬です。本人または家族などが、お腹、脇腹、腕、太ももの柔らかい部位に注射します。注射部位反応を防ぐため、毎回、部位を変えます。注射は専用の補助器具を使います。

針は29ゲージというサイズで細く、注射の深さは、筋肉に到達しない皮下の部分です。

始めるときは特に入院は必要とされていません。注射の仕方や副作用の管理について、主治医や看護師さん、薬剤師さんから十分に説明を受けてください。

コパキソン®の年間薬剤費は2025年10月現在、約205万円です。しかしMSの治療薬として承認されているため、指定難病の条件を満たせば医療費助成が受けられます。詳しくは「医療費助成」をご覧ください。

  • 注射部位反応:注射部位の発赤、痛み、かゆみなどが起こることがあります。注射手技を再確認し、注射部位を毎回変えるなどして対処します。注射部位をもんだりこすったりしないでください。
  • 注射直後反応:注射後数分以内に起こる顔面紅潮、胸痛、息苦しさ、動悸・頻脈などが起こることがあります。多くは一時的で軽いです。対処として注射頻度を週に2〜3回にして、徐々に頻度を増やしていく方法があります。それでも続く場合は改めて主治医に相談してください。
  • 過敏性反応:赤、じんましん、喉のかゆみ、けいれん、失神などが起こることがあります。頻度は低いですが、これらの症状が現れた場合は次の注射は打たずに主治医に連絡してください。

コパキソン®の自己注射を忘れた場合、気付いた時点ですぐに打ちます。

コパキソン®は2〜8℃の冷蔵保存が勧められているため、箱に入れたまま凍らないように冷蔵庫に入れます。注射の際は室温に戻すため、注射の20~30分前には冷蔵庫から出しておきます。冷たいまま注射すると注射部位反応が強く出る恐れがあります。

保冷剤保冷バッグを使い、現地に到着したらなるべく早く冷蔵庫に入れてください。

コパキソン®は空港のX線検査を通過できますが、手荷物で機内に持ち込むのが安心です。

飛行機は原則「注射針は、機内で使用することがなければ持ち込み禁止」とされています。しかし現状として国内の場合、手荷物検査の際に針を持参していることを伝えれば問題ないようです。 航空会社(日本航空、全日空)では、注射器を機内に持ち込む場合は、予約の時点で伝えておくことを勧めています。

海外旅行に行く際は、英文の診断書と薬剤証明書を携帯することをお勧めします。早めに主治医に相談してください。

コパキソン®は他のMS疾患修飾薬とは併用できません。他に併用が禁止されている薬剤はありません。

また、ステロイド薬とコパキソン®の併用は禁止されていません。実際には、ステロイドパルス中はコパキソン®を休む人、ステロイドパルス中もコパキソン®を継続する人と、どちらもいます。決まりはありません。

コパキソン®の治療中でもワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。

コパキソン®は効果が出るまでに数カ月かかるといわれています。治療開始後すぐに再発した場合はまだ効果が出ていないのかもしれず、すぐに「効いていない」とは判断できません。

しかし、再発が続く場合や、これまでに経験したことがないような大きな再発をした場合はコパキソン®が合っていないのかもしれず、治療や診断の見直しが必要になってきます。

別のDMDからコパキソン®に変更した時にこのようなことが起こった場合には、それまで使っていたDMDの効果が切れたことによる再発、あるいは急激に病気が悪化する「リバウンド」の可能性もあります。

使用期間は決められていません。コパキソン®は再発を予防する薬です。この薬を始めて病状が安定し、副作用に問題がなければ、続けた方がいいといえます。

海外の臨床試験で安全性が確認されています。コパキソン®は妊娠中も継続可能です。

添付文書には「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と書かれています。コパキソン®治療中の授乳は可能です。

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  • 2025年11月7日(基本情報を追加)
  • 2024年9月2日(医療費を追加)
  • 2024年3月7日(全体を改訂)
  • 2022年4月27日(全体を改訂)
  • 2016年5月27日(新規公開)

>>多発性硬化症の治療薬一覧(疾患修飾薬:DMD)

監修:MSキャビン編集委員
出典:MSキャビン「MS治療薬解説:コパキソン」
URL:https://www.mscabin.org/ms/mscopaxone/
(最終更新日:2025年11月7日)