多発性硬化症(MS)

新型コロナウイルス感染症

MSと新型コロナウイルス感染症

MSは自分の体の細胞を外敵と見なして攻撃してしまう「自己免疫疾患」だと考えられています。免疫が関わる病気だけに新型コロナウイルスにかかりやすいのではと不安になるかもしれません。けれども現時点では、MS、NMOSD、MOGADであること自体が新型コロナウイルスにかかりやすいといった科学的根拠はありません。

また現時点の報告からすると、MSであること自体が新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクになるとはいえません。ただし進行型MSの人や身体障害度が高い方は重症化のリスクが懸念されています。

一方でMSの発症・再発のきっかけの1つとして感染症が挙げられています。新型コロナウイルスも感染症ですから、感染することで病気が再発する可能性はあります。引き続き感染症予防に努めてください。

疾患修飾薬と新型コロナワクチン

使っている薬と新型コロナワクチンについてまとめました。実際の接種は主治医の先生と十分ご相談ください。

  • ベタフェロン
    ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。コロナワクチンの副反応で具合が悪い場合は、注射日をずらしても構いません。
  • アボネックス®
    ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。コロナワクチンの副反応で具合が悪い場合は、注射日をずらしても構いません。
  • イムセラ®、ジレニア®
    ワクチンは受けられますが、抗体産生は十分ではないかもしれません。ただしワクチンの効果が必ずしも消失するわけではありません。すでに服用中の場合は接種時期については気にしなくて構いません。新規で始める場合は、服用開始2〜4週間前までにワクチンの接種を終えておくことが望ましいとされています。
  • タイサブリ®
    ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。
  • コパキソン®
    ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。
  • テクフィデラ®
    ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。
  • メーゼント®
    ワクチンは受けられますが、抗体産生は十分ではないかもしれません。ただしワクチンの効果が必ずしも消失するわけではありません。すでに服用中の場合は接種時期については気にしなくて構いません。新規で始める場合は、服用開始2〜4週間前までにワクチンの接種を終えておくことが望ましいとされています。
  • ケシンプタ®
    ワクチンは受けられますが、抗体産生は十分ではないかもしれません。ただしワクチンの効果が必ずしも消失するわけではありません。すでに使用中の場合は、ワクチンの接種時期はケシンプタ®投与日から離すことが勧められています。しかし現実的には、希望通りにワクチン接種の予約が入れられないことがあります。ワクチンの接種日を優先し、必要に応じてケシンプタ®の投与日をずらしてください。
    ケシンプタを新規で始める場合は極力、ケシンプタ®の投与4週間前にコロナワクチン接種を済ませておくことが勧められています。

参考:
日本神経免疫学会「新型コロナウイルス感染症に関する多発性硬化症患者さんへの助言 」(2022 年 3 月 21 日改訂版:多発性硬化症国際連合)
日本神経学会「COVID-19 ワクチンに関する日本神経学会の見解