MSと新型コロナウイルス感染症
MSは自分の体の細胞を外敵と見なして攻撃してしまう「自己免疫疾患」だと考えられています。免疫が関わる病気だけに新型コロナウイルスにかかりやすいのではと不安になるかもしれません。けれども現時点では、MS、NMOSD、MOGADであること自体が新型コロナウイルスにかかりやすいといった科学的根拠はありません。
また現時点の報告からすると、MSであること自体が新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクになるとはいえません。ただし進行型MSの人や身体障害度が高い方は重症化のリスクが懸念されています。
一方でMSの発症・再発のきっかけのひとつとして感染症が挙げられています。新型コロナウイルスも感染症ですから、感染することで病気が再発する可能性はあります。引き続き感染症予防に努めてください。
使っている薬と新型コロナウイルス感染症
ご自身が使っている薬が何か影響してしまうのではと不安になってしまうかもしれませんが、決して自己判断で薬を減らしたり止めたりしないでください。必ず主治医にご相談ください。
日本神経免疫学会のホームページに、MS国際連合から出された声明の日本語訳が掲載されています。→「新型コロナウイルス感染症に関するMS患者さんへの助言(2022年3月21日改訂版)」このうち日本で承認されている疾患修飾薬の部分だけ下記に抜粋しました。
- アボネックス®、ベタフェロン®
新型コロナウイルス感染症に悪影響を及ぼさないと考えられる。新型コロナウイルス感染症による入院のリスクを軽減させる可能性が示唆。 - コパキソン®
新型コロナウイルス感染症に悪影響を及ぼさないと考えられる。 - テクフィデラ®、イムセラ®・ジレニア®、メーゼント®、タイサブリ®
新型コロナウイルス感染症重症化のリスクを上昇させないことが示唆。 - ケシンプタ®
新型コロナウイルス感染症により、入院が必要となったり重症化するリスクが増加することが示唆
急性増悪期の治療については私たちの見解になりますが、ステロイドパルス療法については、治療後1カ月程度は免疫機能が低下していると考えて良いかと思います。血漿浄化療法については免疫機能が回復する期間の想定が難しいのですが、少なくとも治療後2〜4週間程度は注意が必要だと思われます。
疾患修飾薬と新型コロナワクチン
使っている薬と新型コロナワクチンについてまとめました。実際の接種は主治医の先生と十分ご相談ください。
- ベタフェロン
ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。コロナワクチンの副反応で具合が悪い場合は、注射日をずらしても構いません。 - アボネックス®
ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。コロナワクチンの副反応で具合が悪い場合は、注射日をずらしても構いません。 - イムセラ®、ジレニア®
ワクチンは受けられます。すでに服用中の場合は接種時期については気にしなくて構いません。新規で始める場合は、服用開始2〜4週間前までにワクチンの接種を終えておくことが望ましいとされています。 - タイサブリ®
ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。 - コパキソン®
ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。 - テクフィデラ®
ワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。 - メーゼント®
ワクチンは受けられます。すでに服用中の場合は接種時期については気にしなくて構いません。新規で始める場合は、服用開始2〜4週間前までにワクチンの接種を終えておくことが望ましいとされています。 - ケシンプタ®
ワクチンは受けられますが、効果が十分に得られないかもしれません。すでに使用中の場合は、ワクチンの接種時期はケシンプタ®投与日から離すことが勧められています。しかし現実的には、希望通りにワクチン接種の予約が入れられないことがあります。ワクチンの接種日を優先し、必要に応じてケシンプタ®の投与日をずらしてください。
ケシンプタを新規で始める場合は極力、ケシンプタ®の投与4週間前にコロナワクチン接種を済ませておくことが勧められています。
参考:日本神経学会「COVID-19 ワクチンに関する日本神経学会の見解」
YouTubeでも解説しています。
→コロナに関する見解1(24分)
→コロナに関する見解2(25分半)
→コロナに関する見解3(19分)