視神経脊髄炎(NMOSD)では、視覚障害、感覚障害、運動障害、排尿・排便障害、疲労など多彩な症状がみられます。
症状は病巣の位置により異なります。現れ方や強さには大きな個人差があり、日によって変動することがあるのも特徴です。
本ページでは、NMOSDで頻度の高い代表的な症状を整理して解説します。
視神経の症状
視神経に炎症が起こる状態を「視神経炎」といいます。
NMOSDでは、この視神経炎が非常によくみられます。
NMOSDの視神経炎では、1回の発作で高度の視力低下、視野欠損、色覚異常、眼の痛みなどが現れることがあります。
症状は、多くの場合は数日のうちにピークに達しますが、時に、数時間のうちに急激に悪化することもあります。
発症時など、治療を受けていない状態で起こる視神経炎は、重症になりやすいのが特徴です。
片目だけでなく、両目に同時に起こることもあります。
脊髄の症状
脊髄に病巣ができると、炎症が起こります。これを「脊髄炎」といいます。
視神経脊髄炎という病名の通り、NMOSDでは脊髄炎がよくみられます。
脊髄炎の中でも、脊髄の横断面の半分以上に炎症が広がった状態を「横断性脊髄炎」といいます。
脊髄に炎症が起こると、次のような症状が現れることがあります。
① 運動障害
NMOSDで横断性脊髄炎が起こると、「歩けない」「立てない」「起き上がれない」といった症状がみられることがあります。
発症時など、治療を受けていない状態では、脊髄炎は重症になりやすく、麻痺が残ることもあります。
② 痛み・しびれ
横断性脊髄炎では、痛みやしびれなどの後遺症が残りやすく、多くのNMOSDの患者さんがつらい症状を経験しています。
脊髄の病巣の位置に一致して、体幹が帯で強く締めつけられるような痛みが出ることがあり、これを「帯状絞扼感(たいじょうこうやくかん)」といいます。
また、動作をきっかけに、意思とは関係なく、痛みを伴う激しいつっぱりが手足や腹筋に起こることがあります。これを「有痛性強直性痙攣(ゆうつうせいきょうちょくせいけいれん)」
といい、NMOSDに特徴的な症状のひとつです。
そのほかにも、皮膚の感覚が鈍くなる、温かさや冷たさを感じにくくなる、かゆみが出るといった症状がみられることがあります。
③ その他の症状
首を前に曲げた時に、背中から足にかけてビリビリとした感覚やヒリヒリした感覚が一瞬走ることがあります。これを「レルミット徴候」といいます。
持続時間は1〜2秒程度で、手や腕にもしびれが走ることがあります。
また、排尿・排便障害や、性機能障害が起こることもあります。
脳幹の症状
NMOSDでは、脳幹に病巣ができることがあります。
脳幹に病巣ができた場合の特徴的な症状として、24時間以上続くしゃっくり、強い吐き気、実際に吐いてしまう嘔吐(おうと)がみられることがあります。
これらの症状が現れた場合、多くは数週間以内に脊髄炎を起こすといわれています。
そのほかにも、次のような症状がみられることがあります。
間脳(視床下部)の症状
NMOSDでは、間脳の一部である視床下部に病巣ができることがあります。
視床下部は、体の水分バランスや睡眠・覚醒のリズムを調整する重要な部位です。そのため、病巣ができると次のような症状が現れることがあります。
大脳の症状
NMOSDでは、大脳に病巣ができることもあります。
大脳に病巣があっても、症状が全く出ない場合があります。
MRIで病巣は確認されるものの症状がみられない状態を「無症候性病巣(むしょうこうせいびょうそう)」といいます。
このような無症候性病巣も含めると、NMOSDの50〜70%の患者さんに大脳病巣があるといわれています。
症状が現れる場合には、次のようなものがあります。
疲労
疲労はNMOSDで非常に多い症状です。人によって程度は大きく異なり、同じ患者さんでも日によって、あるいは時間帯によって変化します。
外からは分かりにくいため理解されづらく、日常生活に大きな負担をもたらすこともあります。
NMOSDの疲労は、主に次の4つのタイプに分けられ、多くの場合は複数が組み合わさって起こります。
①通常の疲労
NMOSDではない人も経験する一般的な疲労です。
② 症状に起因する疲労
身体の障害によって動作が難しい場合、目的を達成するために通常より多くのエネルギーを必要とするため疲労が起こります。
また、夜間に何度もトイレに起きる頻尿による睡眠不足も、このタイプの疲労につながります。
③ 薬物による疲労
ステロイド、抗けいれん薬、抗うつ薬など、治療薬の副作用として疲労が出ることがあります。
④ 病気自体による疲労
気温・運動量・ストレスなどとは関係なく、突然どうしようもない倦怠感が生じることがあります。経験した人は
などと表現します。
突然起こることも多く、原因のメカニズムはまだ明確ではありません。
その他
体温が上がるとNMOSDの神経症状が一時的に悪化することがあります。これをウートフ現象と呼びます。
体温が下がれば症状は元に戻りますが、起こりやすさや程度には個人差があります。
また、性機能が障害されることがあります。
なお、NMOSDが直接の原因で妊娠できなくなることはありません。
NMOSDの症状の特徴
NMOSDの症状は、病巣ができる場所によって現れ方が変わります。病巣ができる部位や大きさは人それぞれで違うので、症状の出方や強さには個人差があります。
従って、1人の患者さんと別の患者さんを比べたとき、「同じ病気なのに全く違うように見える」ことも珍しくありません。
また、症状は季節や体調の影響を受けて変動しやすく、日によって、あるいは1日の中でも変化します。「昨日は元気そうだったのに、今日はつらそう」ということもよくあります。
このような症状の変動は、再発との区別が難しい場合があり、多くの患者さんの悩みの種になっています。
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- 大橋高志(脳神経内科医・鎌ケ谷総合病院)
- 越智博文(脳神経内科医・愛媛大学大学院)
- 近藤誉之(脳神経内科医・関西医科大学総合医療センター)
- 中島一郎(脳神経内科医・東北医科薬科大学)
- 新野正明(脳神経内科医・北海道医療センター)
- 宮本勝一(脳神経内科医・和歌山県立医科大学)
- 横山和正(脳神経内科医・東静脳神経センター)
2025年12月24日(ページ構成改訂)
2023年10月18日(全体を改訂)
2000年1月(新規公開)
監修:MSキャビン編集委員
出典:MSキャビン「NMOSDのあらまし:主な症状一覧」
URL:https://www.mscabin.org/ms/msshojo/
(最終更新日:2025年12月24日)






