アボネックス®（インターフェロン・ベータ1a）は、人間の体内で分泌されているタンパク質「インターフェロン・ベータ」を、遺伝子組み換え技術を用いて薬にしたものです。

アボネックス®による治療は、ベタフェロン®とコパキソン®とまとめて「ABC療法」と呼ばれることがあります。

国内外の臨床試験では、MSの再発回数を減らし、再発した時の症状を軽くする効果が示されています。またMRI検査で確認できる病巣の拡大や新しい病巣の出現を減らす作用もあります。

海外の臨床試験ではMSの障害度の進行を抑制したことが報告されているものの、日本におけるアボネックス®の効能は「多発性硬化症の再発予防」です。

アボネックス®は週1回の筋肉注射で使用します。本人または家族などが、太もも、または腕の筋肉に注射します。自分で針を付けて手動で注射する「シリンジ型」と、あらかじめ針がセットされていてボタンを押すだけで注入できる「ペン型」の2種類があります。

始めるときは特に入院は必要とされていません。注射の仕方や副作用の管理について、主治医や看護師さん、薬剤師さんから十分に説明を受けてください。

アボネックス®の年間薬剤費は2025年10月現在、約171万円（ペン型）、約162万円（シリンジ型）です。しかしMSの治療薬として承認されているため、指定難病の条件を満たせば医療費助成が受けられます。詳しくは「医療費助成」をご覧ください。

• インフルエンザ様症状：
  発熱、頭痛、倦怠感、関節痛、悪寒などの「インフルエンザ様症状」です。治療を始めたばかりの頃によく出ます。
  これに対しては、少ない量から始めて徐々に増やしていく「漸増法」が行われます。こうすることでアボネックス®が無理なく体に慣れていくことが多いです。
  また注射の前後に解熱鎮痛剤を服用します。解熱鎮痛剤は服用のタイミングが重要なので、いつ飲めば良いか主治医とご相談ください。
  インフルエンザ様症状の多くは、時間の経過時間の経過と共になくなっていきますが、症状が軽減しない場合は、別の薬への変更が検討されます。
• 注射部位反応：
  注射をした部位が赤くなったり痛くなったりすることがあります。
  これを避けるためには同じ部位に続けて注射しないようにします。
• リンパ球数の減少・肝機能障害：
  自覚しにくい副作用なので、定期的に血液検査をしてもらってください。
• 抑うつ状態：
  気分の変調がある場合は、早めに主治医に伝えてください。

アボネックス®の自己注射を忘れた場合、気付いた時点ですぐに打ちます。その場合、次の注射は、中1日以上空けてください。

しかし頻繁に忘れるのはあまり良くありません。1週間に1回の注射を続けていくのが難しいようであれば、主治医にご相談ください。

アボネックス®は2〜8℃の冷蔵保存が勧められているため、箱に入れたまま凍らないように冷蔵庫に入れます。注射の際は室温に戻すため、注射の30分前には冷蔵庫から出しておきます。

常温にしたら7日間以内に使用するようにし、それ以上経ったものは、使わないでください。高温は避けてください。遮光も必要です。

保冷剤や保冷バッグを使い、現地に到着したらなるべく早く冷蔵庫に入れてください。

アボネックス®は空港のX線検査を通過できますが、手荷物で機内に持ち込むのが安心です。

飛行機は原則「注射針は、機内で使用することがなければ持ち込み禁止」とされています。しかし現状として国内の場合、手荷物検査の際に針を持参していることを伝えれば問題ないようです。 航空会社（日本航空・全日空）では、注射器を機内に持ち込む場合は、予約の時点で伝えておくことを勧めています。

海外旅行に行く際は、英文の診断書と薬剤証明書を携帯することをお勧めします。早めに主治医に相談してください。

アボネックス®は漢方薬の小柴胡湯とは併用できません。機序は分かりませんが、間質性肺炎を起こす可能性があります。また、他のMS疾患修飾薬とは併用できません。

また、ステロイド薬とアボネックス®の併用は禁止されていません。実際には、ステロイドパルス中はアボネックス®を休む人、ステロイドパルス中もアボネックス®を継続する人と、どちらもいます。決まりはありません。

アボネックス®の治療中でもワクチンは受けられます。接種時期は気にしなくて構いません。ワクチンの副反応で具合が悪い場合は、アボネックス®の注射日をずらしても構いません。

アボネックス®は効果が出るまでに数カ月かかるといわれています。治療開始後すぐに再発した場合はまだ効果が出ていないのかもしれず、すぐに「効いていない」とは判断できません。

しかし、再発が続く場合や、これまでに経験したことがないような大きな再発をした場合はアボネックス®が合っていないのかもしれず、治療や診断の見直しが必要になってきます。

別のDMDからアボネックス®に変更した時にこのようなことが起こった場合には、それまで使っていた薬の効果が切れたことによる再発、あるいは急激に病気が悪化する前薬の「リバウンド」の可能性もあります。

使用期間は決められていません。アボネックス®は再発を予防する薬です。この薬を始めて病状が安定し、副作用に問題がなければ、続けた方がいいといえます。

海外の臨床試験で安全性が確認されています。アボネックス®は妊娠中も継続可能です。

添付文書には「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と書かれています。アボネックス®治療中の授乳は可能です。