視神経脊髄炎(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder)は、視神経や脊髄、脳などの中枢神経に強い炎症が起こる自己免疫疾患です。日本では指定難病です。
視力が急に低下する、手足が動かしにくくなる・ビリビリする・感覚が鈍くなる、吐き気やしゃっくりが続くなど、炎症が起こる場所によってさまざまな症状が現れます。
NMOSDと診断されると、
「目が見えなくなったらどうしよう」
「歩けなくなったらどうしよう」
「再発するの?」
「入院期間はどのくらいになるの?」
「薬は一生続けるの?」
「仕事や学校は続けられる?」
「これからどんな生活になるの?」
など、次から次へと疑問や不安が出てくるかもしれません。
NMOSDでは、発症時や再発時に、その一度だけでも重い症状が現れ、障害が残ることがあります。症状が現れたときには、できる限り障害を残さないために、早めに治療を開始することが重要です。また、再発を防ぐための治療を続けることも大切です。
病気について知ることで、今とこれからの生活の中でできることも見えてきます。
このページでは、NMOSDの症状や原因、診断、治療、日常生活などについて紹介します。
視神経脊髄炎(NMOSD)― 基本情報
| 病気の種類 | 自己免疫疾患(中枢神経系の炎症性疾患) |
|---|---|
| 主に障害される場所 | 視神経、脊髄、脳 |
| 日本の患者数 | 約6,500人 |
| 発症年齢 | 30代後半~50代に多いが、小児から高齢者まで幅広い |
| 性別 | 約70~90%が女性 |
| AQP4抗体 | 約80%が陽性 |
| 主な症状 | 視力低下・視野障害・色覚異常、運動障害・歩行障害、しびれ感・感覚障害・痛み、排尿・排便障害、吐き気・嘔吐・しゃっくりなど |
| 経過 | 無治療のままだと再発しやすく、予防治療が大切 |
| 治療 |
急性期:ステロイドパルス療法、血漿浄化療法、免疫グロブリン大量静注療法など
再発予防:生物学的製剤(5剤承認)、ステロイド、免疫抑制薬 |
| その他 | ほかの自己免疫疾患を合併することがある |
| 制度 | 指定難病(条件を満たせば医療費助成あり) |
NMOSDの主な症状
NMOSDの症状は、炎症が起こる場所によって異なり、現れ方や程度には個人差があります。視神経や脊髄などに強い炎症が起こり、症状が重くなることがあります。
視神経炎
視神経に炎症が起こると、視力が低下したり、視野の一部が欠けたり、色がわかりにくくなったりします。目の奥に痛みを感じる場合もあります。放っておくと失明に至ることもあります。
脊髄炎
脊髄に炎症が起こると、手足が動かしにくくなる、歩きにくくなる、手足がビリビリする、皮膚の感覚が鈍くなる、温かさや冷たさを感じにくくなることがあります。痛みを伴うこともあります。
立てない、歩けない、排尿・排便がうまくできないなど、日常生活に大きな影響が出る場合もあります。
脳の症状
脳の一部に炎症が起こると、しゃっくりや吐き気・嘔吐が長く続くことがあります。視床下部に炎症が及ぶと、日中に強い眠気が出て起きていられなくなる「過眠」や、喉が非常に渇いて大量の尿が出る「尿崩症」が見られることもあります。
また、物が二重に見える、飲み込みにくいなどの症状が現れる場合もあります。
NMOSDの原因と仕組み
NMOSDの約80%で、血液中にアクアポリン4抗体(AQP4抗体)という自己抗体が見つかります。
アクアポリン4(AQP4)は、水分子の出入りを調節するたんぱく質です。脳や脊髄、視神経などの中枢神経では、神経細胞の働きを支えるアストロサイトという細胞に多く存在しています。
NMOSDでは、AQP4抗体がAQP4に結びつくことで免疫反応が起こり、アストロサイトが傷つくと考えられています。その結果、さまざまな神経症状が現れます。
なぜAQP4抗体が作られるのか、その根本的な原因はまだ完全にはわかっていません。

①通常の状態

②AQP4抗体が結びつく

③免疫反応が起こってアストロサイトが傷つき、周囲にも影響が及ぶ
NMOSDの診断のポイント
NMOSDの診断では、症状に加えて、次のような検査の結果を組み合わせて総合的に判断します。
- AQP4抗体検査
- MRI検査
- 髄液検査
- 必要に応じた眼科での検査
AQP4抗体はNMOSDの診断において重要ですが、陰性でも、症状やMRI所見などが診断基準を満たす場合には、NMOSDと診断されることがあります。
診療の中心となるのは脳神経内科です。
NMOSDの急性期治療
NMOSDの発症時や再発時には、炎症をできるだけ早く抑え、よりよい回復を目指すことが重要です。
ステロイドパルス療法
一般的には、まず、メチルプレドニゾロン大量静注療法(ステロイドパルス療法)を行います。
血漿浄化療法
効果が十分でない場合には、血液から病気に関係する抗体などを取り除く血漿浄化療法を早めに行います。
過去にグルココルチコイド(ステロイド)への反応が不十分だった場合や、重症の場合などには、早い段階から血漿浄化療法を行うこともあります。
免疫グロブリン大量静注療法
ステロイドパルス療法で十分な効果が得られない視神経炎では、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)が選択肢となることがあります。原則としてAQP4抗体陽性の場合に行われます。
通院・入院について
急性期治療は、症状や治療内容によって通院または入院で行われます。治療や回復の経過によっては、入院が長期間になることもあります。
NMOSDの再発予防治療
NMOSDは、1回の再発でも重い障害が残ることがあるため、再発を防ぐための治療が重要です。急性期治療が終了したら、次の再発を防ぐために再発予防治療を開始します。
再発予防にはどんな治療がある?
これまで、経口ステロイド薬や免疫抑制薬が再発予防治療に用いられてきました。現在では生物学的製剤も選択肢に加わりました。日本ではAQP4抗体陽性のNMOSDに対して5つの生物学的製剤が承認されています。
薬によって、投与方法、投与間隔、注意する感染症などが異なります。病気の状態や治療効果、副作用、年齢、患者さんの希望などを考慮して治療を選択します。
薬の併用は?
治療によっては、経口ステロイド薬と免疫抑制薬など、異なる種類の薬を組み合わせて使用することがあります。生物学的製剤を複数併用することは行いません。
治療はいつまで続ける?
NMOSDは、再発を予防して障害を増やさないことが重要とされています。そのため、再発がない状態が続いていても、再発予防治療を継続することが大切です。
再発予防治療を続けるにあたり、不安や疑問が出てきた場合は、主治医にご相談ください。
生物学的製剤を長く使っても大丈夫?
生物学的製剤は、臨床試験などで有効性や安全性が評価されたうえで承認されています。
一方、NMOSDでの使用経験は薬によって異なります。長期的な有効性や安全性については、実際に治療を受けている患者さんのデータも集めながら、現在も確認が続けられています。
発症後や再発後に残ることがある症状
NMOSDでは、発症後や再発後に、視覚障害や脊髄炎による痛み・しびれ感、排尿・排便障害などが残ることがあります。外からはわかりにくくても、生活に大きな影響を与える症状や障害もあります。
たとえば、手足や胸・背中などに、ピリピリ・ジンジンする痛みや、締め付けられるような痛みなどが続くことがあります。また、突然、手足などが強くつっぱり、痛みを伴う「有痛性強直性けいれん」が起こることもあります。
再発をしていないから何も困っていないとは限りません。
残っている症状に対しては、薬での対症療法が行われることがあります。必要に応じてリハビリテーションなども行いながら、生活への影響を少なくしていくことが大切です。
「いつもと違う」症状に気づいたら
NMOSDでは、症状が数時間から数日のうちに急激に悪化することがあります。
一般的に、新しい症状が現れたり、以前からある症状が悪化したりして、それが24時間以上続き、発熱や感染などによるものではない場合、NMOSDの再発の可能性があります。
一方、疲労や暑さ、体調などによって、以前からある症状が一時的に強くなることもあります。再発かどうかを自分で判断することが難しい場合もあります。
急な視力低下や手足の動かしにくさなどが現れた場合には、早めに主治医や医療機関に相談してください。
NMOSDは少しずつ進行する病気?
NMOSDでは、明らかな再発がないのに障害が少しずつ進んでいく経過はまれと考えられています。ただし、最近の研究では、このような経過をたどるケースも少数ながら報告されており、現在も研究が続けられています。
日常生活の注意点と工夫
NMOSDと付き合っていくうえで、日常生活の中でできる工夫があります。NMOSDであっても、できることまで控える必要はなく、体調や症状に合わせながら、自分に合った過ごし方を見つけていきましょう。
疲れを感じるときは
疲れやすさには個人差があります。活動と休息のバランスをとり、自分に合ったペースで過ごすことが大切です。
気分の落ち込みや睡眠に問題があるときは
NMOSDでは、気分の落ち込みや睡眠の問題がみられることがあります。こうした変化が続いたり、日常生活に影響したりする場合には、主治医にご相談ください。
暑さで症状が強くなるときは
体温が上がることで、今ある症状が一時的に強くなることがあります(ウートフ現象)。そのような場合には、冷房や冷却グッズを活用したり、長時間の入浴を避けたりすることで、症状がやわらぐことがあります。
感染症に気をつける
NMOSDの治療では、使用する薬によって感染症に関する注意点が異なります。
手洗い・うがいなどの基本的な感染対策に加えて、いつもと違う体調の変化がある場合には、早めに主治医や医療機関へご相談ください。
運動は体調に合わせて
体調や症状に合わせて、運動の量や強さを調整し、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。
仕事・学校・家庭では
症状や疲れやすさに応じて、休憩をとる、活動する時間を調整するなど、負担を減らす方法があります。必要に応じて、周囲に体調や症状について伝えたり、利用できる制度や支援を活用したりすることも大切です。
NMOSDと妊娠・出産
NMOSDと診断されたあと、妊娠・出産について不安や疑問を感じる方もいるかもしれません。しかし、妊娠・出産を諦めなければならないわけではありません。妊娠を考え始めた段階から主治医に相談し、病気の状態や使用している薬について確認しておくとよいでしょう。
薬によっては治療を継続したり、妊娠・授乳に合わせて調整したりできる場合があります。自己判断で薬を減らしたり中断したりしないことが大切です。
NMOSDでは、特に出産後3カ月は再発しやすい時期と報告されています。ただし、出産した人が必ず再発するわけではありません。そのため、妊娠中だけでなく、妊娠前から産後までを見据えて、再発予防の治療について考えておくことが重要です。
利用できる支援・制度
日本では、NMOSDは指定難病です。条件を満たす場合は、医療費の助成を受けられます。そのほかにも、病状や障害の程度などに応じて利用できる制度があります。
難病医療費助成制度
条件を満たす場合、NMOSDにかかる医療費の自己負担が軽減されます。
指定難病登録者証
指定難病であることを証明するもので、福祉・就労などの支援を利用する際に活用できます。
障害者手帳、障害年金、就労支援など
状態によって利用できることがあります。
患者会
同じ病気の方とつながることができる場もあります。
NMOSDのこれから
近年、生物学的製剤が加わり、NMOSDの再発予防治療の選択肢は大きく広がりました。
現在も、
- 再発予防のための新しい薬剤の開発
- すでにある薬剤について、小児での有効性や安全性を調べる研究
- 新しい治療法の研究
- 発症・再発後に残った神経機能の回復を目指す研究
など、さまざまな研究が国内外で進められています。こうした研究によって、NMOSDの治療がさらに進んでいくことが期待されています。
おわりに
10月24日は「NMOSDの日」です。
NMOSDについて知ることは、病気そのものを理解するだけでなく、これからの治療や生活について考えていくための1つの手がかりになります。
病気による症状や、生活の中で感じる困りごとは、1人ひとり違います。NMOSDは長く付き合っていく病気です。ときには、症状や治療のことで不安になったり、これからのことを考えて悩んだりすることもあるかもしれません。
そんなときは、主治医や周囲の人に話したり、同じ病気の人とつながったりすることも、1つの支えになるかもしれません。
治療を続けながら、何らかの症状を抱えていても、それぞれが自分らしい生活を送っていけることを願っています。このページが、患者さんとご家族にとって、NMOSDを知り、これからの生活を考えていくための1つのきっかけになればと思います。
参考
- 日本神経学会監修「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」
- Neuromyelitis Optica Study Group(NEMOS)NMOSD診断・治療推奨(診断編/治療編)
- 大橋高志(脳神経内科医・鎌ケ谷総合病院)
- 越智博文(脳神経内科医・愛媛大学大学院)
- 木村公俊(脳神経内科医・京都大学医学部附属病院)
- 近藤誉之(脳神経内科医・関西医科大学総合医療センター)
- 千原典夫(脳神経内科医・神戸大学医学部附属病院)
- 富沢雄二(脳神経内科医・順天堂大学医学部附属順天堂医院)
- 中島一郎(脳神経内科医・東北医科薬科大学)
- 新野正明(脳神経内科医・北海道医療センター)
- 宮本勝一(脳神経内科医・和歌山県立医科大学)
- 横山和正(脳神経内科医・東静脳神経センター)
- 渡邉 充(脳神経内科医・九州大学病院)
本記事は下記の生成AIを補助的に活用しながら作成しました。
- CHat GPT-6 Sol(草稿、推敲、論文検索・要約、記事構成の整理、推敲・校正)
- Grok 4.7(検索・推敲)
2026年10月24日(新規公開)
監修:MSキャビン編集委員
出典:MSキャビン「視神経脊髄炎(NMOSD)とは?症状・原因・診断・治療を解説」
URL:https://www.mscabin.org/nmosd/what-is-nmosd/
(新規公開:2026年10月24日)






