多発性硬化症(MS)

 

正式な病名は「多発性硬化症/視神経脊髄炎」ですか?

指定難病では「多発性硬化症/視神経脊髄炎」と表記されていますが、これは2つの病気が並列されているだけで、多発性硬化症と視神経脊髄炎は別の病気です。病気の起こり方も治療も違います。この2疾患を合併することはありません。正式な病名は「多発性硬化症」です。

どこか硬くなる病気なのですか?

「多発性硬化症」という病名から、体のあちこちが硬くなるような病気だとイメージされるかもしれませんが、MSは手足や体が硬くなる病気ではありません。脳、脊髄、視神経の炎症が起こった部位を解剖学的に見ると、その部位が瘢痕になって硬くなっている、ということからこの病名が付けられました。

寿命に影響しますか?

MSが直接の理由で寿命が短くなることは考えにくいですが、MSが進行することで身体機能が低下し、そのことが寿命に影響することは考えられます。例えば寝たきりの状態の人は感染症にかかりやすく、それが重症化しやすく、それによって命を落とすことはあります。

なぜ患者数が増えているのですか?

衛生環境が良くなった、食生活が欧米化した、脳神経内科医が増加した、診断技術が向上した、ネット情報が増えた、などが挙げられることがありますが、はっきりしたことは分かりません。

子供に遺伝しますか?

MSを発症しやすくなる遺伝子があることが分かっており、親がMSだと子供がMSになる確率は少しだけ高くなります。けれどもMSでは特定の遺伝子の異常は認められておらず、一般的にイメージされているような遺伝病ではありません。

「MS特有の疲労」というのは、普通の疲労とは違うのですか?

普通の疲労の何倍ものひどい疲労とイメージしていただくといいかもしれません。「病気になる前は経験しなかった異様な疲労」「休んでもとれないだるさ」と表現する人もいます。

ウートフ現象は再発につながりますか?

ウートフ現象が再発の初期症状だったのではと思われるケースはあります。そのため外来では体を冷やしても良くならないかどうかをまず患者さんに質問することが多いのですが、原則として医師は再発とウートフ現象は分けて考えています。

ただし、ウートフ現象により視力低下や動作に支障を来たしてしまうと、けがにつながる可能性があります。気候が暑い時期や、熱い物を食べた後や入浴後などにおかしいと感じたら速やかに体温を下げることをお勧めします。

「再発」と「進行」は何が違うのですか?

「再発」は「新しい症状が出るか、もともとあった症状が悪化して24時間以上続き、発熱や感染がなく、MSに典型的な診察所見がある状態」と理解されています。「進行」は、再発がないのに症状が重くなっていく状態で、数カ月〜年単位で日常生活が不自由になっていきます。

「免疫力を強くする」というものには注意が必要ですか?

「免疫改善やケア」などと免疫に対する効果がうたわれているサプリメントや物品が市場にあふれています。しかし免疫のしくみは複雑で、MSにどう影響するか分かりません。おそらく問題なさそうではありますが、摂取し続けることで何がどう作用するかは分かりません。一方で明らかに健康になれるという保証もありません。始めたい場合は必ず主治医に伝えてからにしてください。

コンビニやスーパーで手軽に買えるヨーグルトや乳酸菌飲料などは、適度な量であれば摂取しても問題ありません。

治らないのに「治療」ってへんじゃないですか?

確かに「治療」には「病気を治す」「治癒」の意味がありますが、「症状の軽快のために行う医療行為」という意味もあります。MSで完治は期待できないためMSキャビンでは、「病状の軽快・安定化のために行う医療行為」をMSの治療と捉え、この言葉を使っています。

更新:
2024年5月29日(全体を改訂)
2022年4月27日
2021年10月1日(新規公開)


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