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多発性硬化症について知ってほしいこと

こんにちは。MSキャビンの中田です。今回のブログでは、多発性硬化症(MS)患者さんの周りの方々に向けて、MSについて知ってほしいことをお伝えします。

MSは、日本にはおよそ18,000人いるといわれているまれな病気で、病名すら見聞きしたことがない、という人が大半だと思います。ですから患者さんは、自分の病気のことを知るのに加えて、それを周りの人にも説明していかなければならないという苦労も抱えています。

この病気が今より知られたものになれば、患者さんの暮らしもより良いものになります。

ですが、MSの全てをいきなり理解するのは大変です。本ブログでは「MSのここだけは知っておいてほしいポイント」に絞ってご説明いたします。どうぞ最後までお付き合いください。
※視神経脊髄炎とMOG抗体関連疾患についても別途掲載予定です。

[目次]
ポイント1 原因不明・根治療法なし
ポイント2 20〜30代に多く発症
ポイント3 誰のせいでもない
ポイント4 見た目に分かりにくい
まとめ

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ポイント1 原因不明・根治療法なし

MSは日本では難病に指定されています。原因が分からず、完全に治癒させる治療方法がありません。このホームページでは「MSの治療薬」としていくつか紹介していますが、それらは全て、MSを完全に治す薬ではありません。

しかし再発に関してはかなり抑えることができるようになっています。治療は「病状が少しでも悪化しないように」という目的で行われる再発予防治療と、症状を和らげる対症療法に分けられます。自分でもできるリハビリを含めた日々の過ごし方も重要です。

そして薬には副作用もあります。患者さんは「いつまで治療を続けなければならないのか」「治療しても悪化が止まらないかもしれない」などの不安も抱えています。

ですので「(退院したからといって)治ってよかったね」「がんばって治そうね」といった声かけは、「治らない病気なのに」と、患者さんを傷つけてしまうことになりかねません。せっかく気にかけていただいたのにも関わらず、です。

ではどうしたらいいかというと、例えば「そばにいるからね」「話したい時は聞くからね」などと声をかけていただけると、患者さんにとっては不安感・孤独感の軽減につながります。

ポイント2 20〜30代に多く発症

MSの発症年齢は20〜30代に多く、20代に発症のピークがあります。人生これからという年代に発症して、人生のプランを修正しなければならないことも結構多いです。友人はみんな人生を順調に歩んでいるように見えて、自分だけが取り残されている孤独感を持っていることもあります。

ですので、これは年配の方からよく言われることなのですが、「若いからすぐ良くなるよ」は悲しくなってしまいます。若いからこそ困っているのです。そして、若いからといって治る病気でもありません。応援のお気持ちはありがたいのですが、この声かけは避けていただけると助かります。

【避けていただきたい3つの声かけ】
「治ってよかったね」
「がんばって治そうね」
「若いからすぐ良くなるよ」

ポイント3 誰のせいでもない

MSは発症・再発の原因が分からない病気です。しっかり体調を管理しても、食生活を整えても、気合を入れても、自力で病状をコントロールすることが難しい病気です。「自己管理できていないから病気になった。再発した」という理解は間違いです。

MSになったのは、患者さんのせいでも、共に暮らすご家族のせいでも、親御さんのせいでも、誰のせいでもありません。

ポイント4 見た目に分かりにくい

MSでは神経の症状がいろいろ出てきますが、よくみられるものは、手や足がピリピリしびれる、歩きにくい、物が見えにくい、疲れやすいなどです。見た目に分かりにくいため、多くの人が苦労しています。

例えば「歩きにくい」という症状。大抵、歩けることは歩けます。なので「歩けるんだ」「元気そう」「本当に難病なのかな」と思うかもしれません。けれども実は歩行のペースが遅かったり、すぐ疲れるため椅子を探していたりしています。

元気そうに話をしていても、実は頭の中は情報処理能力の低下で混乱していたり、手足のしびれがつらかったり、帰宅したらその場でぐったりと倒れ込んでいたりします。病気があるようには見えなくても、元気そうに見えても、実は様々な不調を抱えています。

しかもそれは日によって、時には1日の中でも変化します。これは決して嘘をついているわけでも怠けているわけでもありません。「症状の変動」はMSの特徴の1つです。これがあるため気軽に予定を組めない、という患者さんも多いです。昨日はぐったりしていたのに、今日はケロっとしている、ということもMSではよくあります。

患者さんの実際の声は以下の通りです。こちらもご覧いただけると嬉しいです!

症状の出方や程度は、患者さんそれぞれで違います。どんな症状があって、どんなことに困っているのか、直接聞いていただけると、理解を深められると思います。気にかけてもらっていることが伝わり、患者さんも喜ぶでしょう。

それと、これも特徴の1つなのですが、MSの人は大抵、暑さに弱いです。夏場は特に、エアコンなどで快適な環境を整えることも意識していただけると助かります。
[参考]→特別ブログ「熱中症・ウートフに気をつけよう」

まとめ

いろいろ書きましたが、MSの人たちは、元気そうに見えても実は日々、大変な思いをしていることが多いです。それでも、少しでも普通でいられるように、少しでも周りに心配をかけないように、いつも頑張っています。

患者の訴えを信じて寄り添っていただいて、気持ちやニーズに応じてサポートしていただけると助かります。(編集委員監修済み)

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